The 56th Annual Meeting of Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

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デジタルオーラル

電気生理学・不整脈

デジタルオーラル(II)29(P29)
電気生理学・不整脈4

指定討論者:堀米 仁志(筑波大学医学医療系 小児科)

[P29-1] Dyssynchronyを生じたFontan failureに対してCRTが著功した一例

橘高 恵美, 安藤 達也, 古河 賢太郎, 石川 悟, 森 琢磨, 飯島 正紀, 藤原 優子 (東京慈恵会医科大学附属病院 小児科学講座)

Keywords:Fontan, CRT, 予後

【背景】成人領域では、dyssynchronyによる心不全に対してCRTの有効性が多く報告されているが、複雑な形態の先天性心疾患に対する適応やアプローチ法は定まっていない。今回我々はFontan術後遠隔期にdyssynchronyによる心不全を呈し、CRTによって著明な改善を得られた一例を経験したため報告する。【症例】20歳男性、DORV(TGA type), CoA, multiple VSDに対して日齢4にArch reconstruction、PA banding、DA ligationを行い、2歳10か月時にfenestrated TCPC(ECC)を行った(盲端肺動脈の残存あり)。16歳6か月時のカテーテル検査でLVEF 52%、RVEF 54%、CI 3.4、NYHA 1度であったが、2か月後に全身倦怠感が出現し、急性心不全(NYHA 3度)で入院した。心電図でQRS幅の拡大(160msec)を認め、心臓MRIでTR regurgitant fraction 36%と高値で、LVEF 24%(LVCI 2.03 l/min/m2)、RVEF 34%(3.60 l/min/m2)と左室収縮機能低下が目立った。盲端肺動脈による左室後負荷とwave reflectionが左室収縮機能不全を惹起し、それに伴うdyssynchronyが低心拍出量の主因と考えてCRTを施行した。双極button式心筋電極の右室リードは房室間溝近くの右室側壁と心尖部近辺に、左室リードは左第6肋間側開胸で最も閾値が低い左室側壁に縫着した。Pacing parameter はA-V delay時間 100ms、LV first、V-V delay時間 80msに設定した。術後52日目のカテーテル検査で両心室EF 36%、CI 2.6と改善を認め、再入院なく術後3年経過した現在も両心室EF 35%、QRS 134msec、NYHA 1と経過良好である。【考察】急性期にTRの増悪を認め、盲端肺動脈への介入と合わせてDKS +TVPを検討したが全身状態不良であり、リスクが高いと判断した。さらに心電図と心臓MRIからdyssynchronyが病態の首座と考えCRTを行った。本症例ではCRT術後早期に心機能が改善し、遠隔期も心機能を維持しており、dyssynchronyによるFontan FailureへのアプローチとしてCRTの有効性が示された。