[P31-3] 学校心臓検診での心房粗動を契機に発見されたSCN5A遺伝子変異を伴う洞機能不全症候群の学童例
Keywords:SCN5A, 学校心臓検診, 洞機能不全症候群
【はじめに】SCN5A遺伝子はQT延長症候群、Brugada症候群(BrS)、拡張型心筋症、家族性洞不全症候群、進行性心臓伝導障害などの遺伝性疾患の原因とされる。今回学校心臓検診で心房粗動(AFL)を契機に発見されたSCN5A遺伝子変異を伴う洞機能不全症候群(SSS)の学童例を経験したので報告する。【症例】9歳男児。既往歴:1歳6か月時有熱時意識消失。幼児期に複数回入浴後腹痛、四肢脱力、顔色不良、冷汗の症状あり。家族歴:父方曾祖父に突然死、父方祖母にI度房室ブロック、V1にrsRパターン、父にV1のrsRパターンあり。現病歴:小学校4年生の学校心臓検診で心電図上”AFL”を指摘された。初診時心電図では心房心拍数240拍/分(bpm)、3:1-4:1房室伝導で心室心拍数(HR)70bpm台の通常型AFLが疑われた。電気的除細動で基本調律は洞調律に服した。除細動後のHolter心電図で、総心拍数84,374拍/日、最小HR 30bpm、最大RR間隔5.0秒、2秒以上のポーズ3132回/日でSSSと診断した。心臓電気生理学的検査およびカテーテルアブレーション(CA)では、臨床的心房頻拍は誘発されず、下大静脈三尖弁輪間峡部ラインにCA施行、最大洞結節回復時間は1756m秒と延長がみられた。遺伝子解析でSCN5A遺伝子に既報のナンセンス変異(c.1603C>T p.R535Ter)を認めた。【考察とまとめ】SCN5A遺伝子変異のうち、本例で検出された変異は機能喪失の表現型で、心臓伝導障害やBrSと互換性があると報告されている。家族内検索は未施行だが、本家系では同変異によりBrS様心電図、SSS、心臓伝導障害などの多彩な表現系を呈したと考えられた。本例に対するペースメーカーの適応や設定、植込み型除細動器など非薬物的治療の適応についても、多彩な表現系を踏まえて慎重に検討する必要がある