[P31-4] 胎児徐脈性不整脈を契機に診断されたSCN5A遺伝子変異の1例
Keywords:SCN5A, Brugada症候群, 進行性心臓伝導障害
【はじめに】SCN5A遺伝子変異はBrugada症候群、QT延長症候群、進行性心臓伝導障害など多彩な表現型を呈する。【症例】近医産婦人科での在胎38週時の妊婦検診にて胎児心拍不整を認め、当院胎児心臓外来に紹介となった。胎児心エコー検査にて間欠的2:1 房室ブロックを認め、基礎疾患としてQT延長症候群を疑った。経腟分娩にて在胎40週3日、体重3224gで仮死なく出生し、モニタリングのためNICU入室となった。出生数時間後から間欠的にwide QRSとなり、その後2:1 房室ブロックとなった。安静時心拍数は55-60/分であったが、啼泣時などには1:1伝導となることもあった。QTc(B)時間は550msecと延長し、late appearing T、T波に重なるP波を認めることから、QT延長症候群(LQT3)を疑い、メキシレチンを開始した。日齢3からは房室ブロックは消失した。QTc(B)時間は460-500msecで、LQT2の疑いもありβ-ブロッカーの内服を追加した。QT延長症候群に関する遺伝子検査施行したとろSCN5A遺伝子のnonsense mutationがあり、その変異はBrugada症候群での病的変異として報告されているものと判明した(c.4885C>T, p.R1629X)。以上の結果を踏まえ、メキシレチン、β-ブロッカーは中止。現在2歳で、一度のみV1誘導で右脚ブロック、coved typeのST上昇を認めたが、無治療で経過観察中である。【考察】胎児期から新生児早期にかけては脚ブロック・房室ブロックが主体で、その後coved typeのST上昇を認めたことから、本症例でのSCN5A遺伝子変異の表現型は、伝導障害とBrugada症候群とのoverlapが考えられる。overlap症例はcardiac eventが多いとの報告もあり、注意深い観察が必要である。