The 56th Annual Meeting of Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

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デジタルオーラル

集中治療・周術期管理

デジタルオーラル(II)32(P32)
集中治療・周術期管理1

指定討論者:平松 祐司(筑波大学医学医療系 心臓血管外科)

[P32-4] PA slingの臨床像と周術期管理

長田 洋資, 小谷 匡史, 正谷 憲宏, 木下 彩希, 齊藤 修 (東京都立小児総合医療センター救命・集中治療部集中治療科)

Keywords:PA sling, ECMO, 周術期

【背景】PA sling(PAS)は稀な血管奇形で、高率に気管狭窄を合併し、その手術関連の死亡率は高い(10-14%)。当院では気管狭窄率(狭窄径/正常径)40%未満を絶対適応、40-60%を相対適応とし、臨床経過と合わせて手術適応を決定している。今回はPASの管理の問題点を解明した。【方法】2010年1月から2019年8月までに当院でPASと診断された症例の臨床像と周術期管理を後方視的に検討した。【結果】全症例35例のうち完全気管輪の合併は33例(94%)、その他の心血管系奇形の合併が28例(80%)であった。手術介入群(O群)は29例(83%)であり、月齢中央値は5(min-max:1-22)、手術回避群(N群)は6例であった。O群では25例(71%)が肺動脈移植+slide tracheoplastyを行い、4例が肺動脈移植のみ行った。O群では絶対適応は5例、相対適応は23例であり、N群では相対適応は3例だった。死亡率はO群で6.8%(2/29例)、N群で16.6%(1/6例)であった。術後フォロー期間は1875±957日(平均±SD)で、遠隔期死亡はなし。O群では、術後ECMO導入率は34%(10/29例)と高率であり、適応は術後の気管内出血などによる換気不全であり、ECMO離脱率は90%(9/10例)であった。死亡例はN群1例で突然死(窒息)、O群2例は術後ECMOを要し、死因はSeptic shock(ECMO離脱後)、気管壊死(ECMO離脱不可)であった。【考察】本検討のO群の死亡例は術前にECMO導入を擁しており、既報で挙げられているリスク因子の通りであった。当院の術後ECMO導入率は高いが、重大な合併症なくECMO離脱に至っており、手術・手術適応だけでなく周術期管理も重要である。また、N群の死亡例は狭窄率が40%と絶対適応の基準に近接しており、積極的な介入で死亡が回避できた可能性がある。【結語】PASは手術介入を念頭においた術前からの周術期管理も重要であり、手術介入が相対適応となる症例は手術の要否に関し慎重な判断が求められる。