The 56th Annual Meeting of Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

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デジタルオーラル

集中治療・周術期管理

デジタルオーラル(II)35(P35)
集中治療・周術期管理4

指定討論者:猪飼 秋夫(静岡県立こども病院 心臓血管外科)

[P35-5] 原発性免疫不全症のスクリーニング検査であるTREC検査の新生児期導入にともなう、新生児心臓手術周術期管理に及ぼす影響について

杉村 洋子 (千葉県こども病院 集中治療科)

Keywords:周術期管理, TREC, 新生児

新生児マススクリーニングが進化し、原発性免疫不全症のスクリーニング(TREC)が可能となった。当院でも2019年4月から導入し、新生児心臓術後に小児集中治療室PICUへ入室する患者の中にもTREC陽性が出現した。【目的】新生児心臓術後に起こりうる重篤な感染に対して、注意喚起をすべき症例背景を検出する。【方法】対象は、2018年4月~2019年12月までに当院PICUへ入室した先天性心疾患術後新生児症例。単施設観察研究。末梢血リンパ球数の推移を追い、アウトカムは生命予後と感染の有無とした。【結果】先天性心疾患手術を目的として入室した新生児は43例で、PICU退室時の死亡は4例で遠隔期死亡が1例だった。開心術は22例で入室時日齢中央値は11日(0~28日)だった。TREC陽性は2例で、陽性率は10%程度であった。陽性者のPICU滞在中のリンパ球数の中央値は各々、1550/μl、447/μlと低値で、前者はカンジダ感染性心内膜炎を、後者はMRSA他の血流感染を合併したが生存中である。これを踏まえ、リンパ球数中央値1600/μlで2群にわけ、生命予後と血流感染の発生について検討した。1600/μl未満をI群、1600/μl以上をII群とした。I群/II群は11/32症例で、生命予後は感度/特異度=0.6/0.79、血流感染陽性は感度/特異度=0.63/0.79と良好な指標とは言い難かった。関心術はI群/II群=全例/4割、PICU帰室後の体外循環はI群で2例。疾患はI群は大動脈縮窄、離断、左心低形成、完全大血管転位、総肺静脈還流異常で、II群は前述の疾患は全体の約半数であった。また、周術期に末梢血リンパ球数が1000/μl未満の時期がある症例が11例あり、この集団はI群とは一致しなかった。以上のように、周術期の末梢血リンパ球数低値の症例が全例TREC陽性となるわけではないことが再確認された。さらに症例を重ねるとともに、一過性でも易感染性のある症例に適切な介入ができるように、各方面と協力して治療にあたる必要があると考えた。