[P36-3] MYH7遺伝子変異の小児心筋症における多様性について
キーワード:MYH7, 心筋症, 次世代シークエンス
【背景】MYH7遺伝子はβミオシン重鎖をコードし、アクチンと相互作用し心筋収縮に働く。MYH7遺伝子変異は肥大型心筋症(HCM)、左室心筋緻密化障害(LVNC)、拡張型心筋症(DCM)など表現型に多様性がある一方で、その多様性の理由については明らかにされていない。【目的】MYH7遺伝子変異が見いだされた小児心筋症患者の臨床像ならびに遺伝学的背景を明らかにすること。【対象と方法】2003年4月~2019年12月までに次世代シーケンサーを用いてMYH7遺伝子変異が見いだされた小児心筋症患者を対象とし、後方視的に臨床像ならびに遺伝学的背景を検証した。【結果】症例はHCM群(9例)、DCM群(3例)、LVNC群(30例)であった。各群の観察期間の平均はHCM群:4.7年、DCM:5.7年、LVNC:5.2年であった。LVNC群では1歳未満に心不全を伴い発症する傾向がみられた。一方、HCM群では乳児期以降の診断例が多く(診断時1歳以上の割合:HCM群=67%、DCM群=33%、LVNC群=23%)、診断時の心不全は少なく(初発時心不全:HCM=11%、LVNC=63%、DCM=100%)、心臓健診を契機に診断に至る例が多くみられた。観察期間中の塞栓症、致死性不整脈を発症した症例はいずれの群にもみられなかった。死亡例と心移植例はLVNC群に4例存在し、HCM群、DCM群では心移植例、死亡例は存在しなかった。遺伝子変異は2例を除き全てミスセンス変異であり、いずれの群でもSub Fragment 1に最も多くみられた。 LVNC群ではLight meromyosinの変異において初発時の心不全、左室駆出率低下(<50%)が有意差をもって多くみられた。死亡例の変異はSub Fragment 1にあり、2例はDouble Variantであった。【結論】MYH7遺伝子変異においては、心筋症の病型によりそれぞれ臨床像と遺伝学的背景が異なることが明らかとなった。