[P40-1] DPCデータを用いた小児心筋炎に対する機械的補助循環治療例の予後
Keywords:急性心筋炎, 機械的補助循環, 生存率
【背景】本邦の小児心筋炎発生率は人口10万人あたり年0.24例とされ、無症状のものから短時間で死亡する例まで臨床像は多彩である。機械的補助循環(Mechanical Circulatory Support: MCS)は最重症例の救命を可能としたが、その治療例の臨床像や予後は不明な点が多い【目的】DPCデータを用いて小児心筋炎MCS治療例の生存退院率および予後不良因子を明らかにすること【方法】2010年7月から2018年3月にDPC登録された20歳未満の「主病名または入院契機病名かつ最ももしくは2番目に資源を投入した病名が心筋炎」で、処置コードから「機械的補助循環」を使用した症例を抽出し、その退院時転帰を調査した。さらに生存退院(S)群と死亡退院(D)群に分類し、その特徴を検討した。【結果】症例は162例で、生存退院率は71.0%であった。D群は低年齢(8.8±7.2 vs. 11.1±6.3, p=0.05)、低体重(17±9.5 vs. 31.5±17.4 kg, p=0.06)の傾向が見られた。入院時併存症は不整脈(19.1% vs. 29.6%)や播種性血管内凝固症候群(23.4% vs. 14.8%)などS群と有意差を認めたものはなかった。入院後の処置はMCS導入前の胸骨圧迫(46.8% vs. 27.0%, p=0.02)、経過中の腎代替療法(66.0% vs. 42.6%, p<0.01), 血漿交換(10.6% vs. 2.6%, p=0.03)がD群で多く施行されていた。D群で24時間以内に死亡した7例中6例で導入前の胸骨圧迫を行っており、この7例を除いた40例は胸骨圧迫(40% vs. 27%, p=0.12)の施行率は差がないものの、腎代替療法(72.5% vs. 42.6%, p<0.01), 血漿交換(12.5% vs. 2.6%, p=0.02)はS群と比較し多く施行されていた。多変量解析では腎代替療法は死亡退院と関連した(オッズ比2.87, p=0.02)【考察】本邦では過去にMCS治療47例の生存率は57.4%と報告されており、本検討では予後の改善が認められた。一方で胸骨圧迫施行例と入院早期の死亡と、腎代替療法例が入院死亡に関連を認めた。