The 56th Annual Meeting of Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

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デジタルオーラル

心筋心膜疾患

デジタルオーラル(II)40(P40)
心筋心膜疾患5

指定討論者:山村 健一郎(九州大学病院 小児科)

[P40-4] 生後4か月で診断に至った新生児ループスによる重症僧帽弁閉鎖不全症の1例

戸田 紘一, 多喜 萌, 連 翔太, 小島 拓朗, 葭葉 茂樹, 小林 俊樹, 住友 直方 (埼玉医科大学国際医療センター 小児心臓科)

Keywords:新生児ループス, 僧帽弁閉鎖不全, 皮疹

【緒言】新生児ループス(NL)の心障害として完全房室ブロックは有名であるが、僧帽弁閉鎖不全(MR)の報告は少ない。我々は、生後4か月で診断に至ったNLによる重症MRの女児例を経験したので報告する。【症例】母体は27歳0回経産で、SLE及びシェーグレン症候群と診断されPSL内服加療中であった。妊娠中期の抗SS-A/Ro抗体は1200 U/mLであったが胎児超音波での異常指摘はなく、児は妊娠38週3日に正常経腟分娩、出生時体重 2652gであった。出生後の全身状態は良好で皮疹はなく、心電図、心臓超音波検査(UCG)にて明らかな異常は認められなかった。生後6週に環状紅斑が出現し前医を受診し、抗SS-A/Ro抗体は1200 U/mLと高値でありNLと診断された。この時点でのUCGは実施していなかった。4カ月健診にて心音異常を指摘され当院を紹介受診した。入院時、収縮期逆流性雑音及び奔馬調律を認め、抗SS-A/Ro抗体は183 U/mL、抗SS-B/La抗体は1.0 U/mL、UCGでは左室・左房の拡大と重症のMR及び中等症の僧帽弁狭窄を認めた。また、心嚢水と僧帽弁のエコー輝度の上昇および肥厚を認め、NLによる心筋炎、それに伴う僧帽弁閉鎖不全及び狭窄(MSR)と診断した。mPSLパルス療法、免疫グロブリン投与を行ったがMSRは改善を認めなかった。現在は外来で抗心不全療法を継続している。【考察】胎児期・新生児期に明らかな僧帽弁の異常を指摘されず、その後にNLによると思われるMSRを呈した症例を経験した。抗SS-A抗体陽性母体では2%に児に完全房室ブロックが発生し、16%に時に皮疹が出現するが、皮疹出現例の多くは高力価の抗SS-B抗体陽性母体からの出生児である。胎児、新生児での心筋炎の報告も極めて稀であり、新生児期以後に心筋炎を合併した報告は見当たらない。本症例では新生児期に皮疹や心障害は認めず、新生児期以降にMSRが進行したと考えられた。【結語】抗体価が高い症例では例え新生児期以後であっても心障害への注意が必要である。