第56回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

デジタルオーラル

心筋心膜疾患

デジタルオーラル(II)41(P41)
心筋心膜疾患6

指定討論者:髙橋 啓(東邦大学医療センター 大橋病院病理診断科)

[P41-2] 新生児心横紋筋腫に対するEverolimsの投与方法の検討

真弓 怜奈, 福永 英生, 磯 武史, 若月 寿子, 松井 こと子, 池野 充, 古川 岳史, 高橋 健, 稀代 雅彦, 清水 俊明 (順天堂大学 医学部 小児科・思春期科)

キーワード:結節性硬化症, 心横紋筋腫, エベロリムス

【背景】結節性硬化症(TSC)はTSC1/-2遺伝子変異によるmTOR異常活性で引き起こされる神経皮膚症候群であり、胎児期・新生児期に心横紋筋腫をきたすことで知られる。2019年8月にmTOR阻害剤Everolims(Evr)がTSCの重症心横紋筋腫へ適応拡大されたが、新生児に対する投与方法については未だ不明な点も多い。我々が経験した心横紋筋腫に対するEvr使用の2新生児症例から、安全で有効な投与方法について文献的考察も交えて検討する。【症例】症例1:胎児エコーで心臓腫瘍を認め、在胎39週3日、体重2844g経膣分娩で出生。左室は腫瘍に占拠され、動脈管右左短絡依存性の血行動態と判断しPGE1αCD(PG)を投与し、救命のため日齢3からEvr0.5mg(3mg/m2)/日の内服を開始した。投与開始後から腫瘍は著明に退縮し循環動態の改善を得たため、日齢6にPGは中止した。血中濃度の調整のため、日齢8~12は休薬、日齢13から0.25mg(1.5mg/m2)/日に減量、日齢16から同量の隔日内服とし日齢32に退院、生後2か月まで内服を継続した。症例2: 胎児エコーで心臓腫瘍を認め、在胎39週2日、体重3106g経膣分娩で出生。右室内に巨大な心臓腫瘍があり右室流出路狭窄を認めた。順行性肺血流が制限されており日齢0からPGとEvr0.25mg(1mg/m2)/日の隔日内服を開始した。投与開始後腫瘍は著明に退縮し循環動態の改善を得たため、日齢4にPGは中止し日齢24に退院、生後2か月まで内服を継続した。【考察】心横紋筋腫へのEvrの有効性は知られているが、新生児は血中濃度の調整が難しく有害事象の発現や休薬を余儀なくされた報告もある。0.25mg/日の低用量隔日投与は簡便な上安定した血中濃度維持が可能で、重篤な有害事象の出現なく治療が可能であり、投与方法の1つとして提案する。