[P41-6] 孤立性右室低形成の臨床像について:3症例と文献的レビューからの考察
Keywords:孤立性右室低形成, チアノーゼ, 心房間交通
【背景】孤立性右室低形成(isolated right ventricular hypoplasia; IRVH)は、右室が流入路・肉柱部・流出路の3成分を有しながら低形成を呈するものの、三尖弁閉鎖や肺動脈弁閉鎖など他の先天性心疾患は合併しないものと定義される。IRVHは非常にまれな心疾患であり、1950年にCooleyらにより最初の症例報告がなされて半世紀が経過しているが、その実態は明らかではない。【方法】当院を受診したIRVH 3症例についてその自然歴を後方視的に観察し予後を明らかにし、既報の本疾患患者と併せて文献的レビューを行った。【成績】症例1:42歳女性。41歳頃から浮腫と体重増加を認めた。42歳時の心臓カテーテル検査にて右室拡張末期容積にて正常の43%でありIRVHと診断し、利尿剤を開始した。しかし、その後、右心不全が増悪し、低心拍出と浮腫が徐々に進行し、49歳時に永眠された。症例2:2歳男児。新生児期にチアノーゼが認められた。当初は新生児遷延性肺高血圧と診断され、NICUにて肺高血圧の治療が行われた。心臓MRIにてRVEDV が正常の63%であった。現在は無症状で経過している。症例3:1ヶ月女児。胎児期に右室低形成と診断し出生後NICUに収容された。出生後のカテーテル検査ではRVEDV が正常の51%であり、PFOを認め右左短絡を伴っていた。これまでに孤立性右室低形成として報告された30文献から49症例での検討では、死亡例が10例あり、家族歴を有する症例、三尖弁の小さな症例が予後不良因子であった。【結論】今回の結果より、右室や三尖弁の大きさの程度により、血行動態・臨床症状・予後が左右されることが予想された。診断や治療を検討する上で、孤立性右室低形成の実態、予後についての大規模な調査研究を行うことが喫緊の課題と考えられた。