[P42-1] 心臓超音波検査を用いた小児がん生存者における心機能低下の発生機序の解明
Keywords:化学療法, 左室内拡張早期圧較差, ストレイン
【背景】小児がん生存者において、アントラサイクリン系抗癌薬による心毒性は、予後の重要な決定因子の一つである。近年、鋭敏な拡張能指標である左室内拡張早期圧較差(Intra ventricular pressure gradient: IVPG)が、心機能障害の有用な早期指標となることが報告されているが、小児がん生存者における有用性と心機能低下の機序に関する解明は十分ではない。【目的】小児がん生存者におけるIVPGの変化とその機序を検討すること。【方法】 5歳から40歳の小児がん生存者77例と年齢を近似した正常対照群77例を3群に分類した(C1、N1:5-10歳、C2、N2:11-15歳、C3、N3:16-40歳)。心臓超音波による一般的計測に加え、胸骨傍短軸像より心基部、乳頭筋部、心尖部の円周方向、心尖部四腔像より長軸方向のそれぞれの内層ストレイン(BCS、 PCS、ACSおよびLS)と拡張早期のストレインレート(BCSR、PCSR、ACSRおよびLSR)を、Color-M-modeより IVPGを計測した。【結果】C2群とN2群間でACSR(1.52 ± 0.33 vs. 2.51 ± 0.74 , p < 0.001)、C3群とN3群間でBCS(-19.3 ± 4.6 % vs. -24.7 ± 3.0 %, p < 0.001),、PCS(-20.1 ± 4.2 % vs. -25.1 ± 3.2 %、p < 0.001)、ACSR(1.28 ± 0.40vs. 2.13 ± 0.64、p < 0.001), PCSR(1.264 ± 0.38 vs. 1.92 ± 0.35、p = 0.027)、Total IVPG(0.27 ± 0.12 mmHg/cm vs. 0.38 ± 0.07 mmHg/cm、p = 0.001)、Mid to apical IVPG(0.11 ± 0.08mmHg vs. 0.20 ± 0.06mmHg、p < 0.001)が有意に低下していた。Mid to apical IVPGはchemo群でのみ年齢と相関を認め、BCS、ACSまたすべてのCSRと相関を認めた。【結語】小児癌生存者において、Mid to apical IVPGは円周方向の変形能の低下とともに経年的に低下する。