[P42-3] 入院後1ヶ月でクラッシュした拡張型心筋症の12歳女児例:IMPELLA2.5装着下でのメディカルジェットによる搬送経験
Keywords:IMPELLA, 拡張型心筋症, メディカルジェット
【背景】心臓移植を要するような小児重症心不全患者は、管理可能な施設が限られるため時に長距離の緊急搬送が必要で、搬送前に補助循環装置を装着せざるを得ない場合もある。IMPELLAは近年使用可能となった補助循環機器で、比較的容易に左室の負荷を軽減できるが、本邦における小児での使用経験や航空機搬送の報告は乏しい。【症例】12歳女児。4ヶ月前の学校心電図検診では異常はなかった。数日前からの腹痛が増悪し前医に緊急搬送され、急性心不全にて当院に転院、著明な左室拡大と心機能低下を認め拡張型心筋症と診断された。循環作動薬使用下にエナラプリルを導入し一時症状は改善したが、カテコラミンからの離脱が困難であり、36病日に心室頻拍を契機にクラッシュしIMPELLA2.5を装着した。その後も心機能は回復せず、持続的な補助循環と心臓移植を考慮し大阪の小児移植施設に緊急搬送となった。搬送には医師2名、看護師、臨床工学士各1名が同行、不測の事態に備え予備制御装置と交換用パージカセット・パージ液、予備バッテリー、携帯型超音波装置を携行して救急車とメディカルジェットを乗り継いだ。搬送中のIMPELLA位置のずれを防ぐため、患者とIMPELLA装置、輸液ポンプ、モニターを一体化したオリジナルバックボードシステムを当院で作製し、患者は深鎮静・調節呼吸として移動、約5時間で大きなトラブルなく予定通り搬送し得た。【考察】IMPELLAは制御装置も小型で、航空機での搬送には有利であった。一方で、搬送中にトラブルが生じても再挿入は困難であり厳重な管理が必要となる。また、装着後に刺入部出血や溶血の事象があり、小児においては装着方法や管理に工夫が必要と感じた。今回は、患者と装置を一体化したこと、当日実機での搬入出方法を含めたシミュレーションを行ったことが有用であった。重症心不全患者は様々な状況で搬送を要する可能性があり、安全に遂行するために今後も経験の蓄積が必要である。