[P44-1] フォンタン術後の難治性蛋白漏出性胃腸症へのミドドリン治療
キーワード:フォンタン, PLE, ミドドリン
【背景】フォンタン術後の続発症の1つに蛋白漏出性胃腸症(PLE)がある。浮腫、下痢、低栄養、易感染性などの症状を呈する。治療として、利尿剤、肺血管拡張剤、ステロイド、ヘパリンなどの投与やカテーテル・外科的手術による血行動態への介入が行われるが、難治性であることが多い。その場合の治療法としては心臓移植しか残っていない。PLEの機序については不明な点が多かったが、2017年に重要な報告がなされた。フォンタン術後のPLE患者においては腸管に分布するリンパ管が拡張しており、そこからアルブミンを多く含んだリンパ液が腸管内に漏出していることがリンパ管造影にて明らかにされたのだ。リンパ管はα受容体の刺激により収縮の程度が強化され、かつ収縮の頻度が上がる。そこで2019年、フォンタン術後のPLE患者4例にα受容体刺激薬であるミドドリンを投与し、治療に成功したことが報告された。これを受け、当院でPLEについて治療に難渋しているフォンタン術後症例に対してミドドリン投与を行ったので報告する。【症例】20歳女性。単心室に対して2歳時にフォンタン手術を施行。7歳時にPLEを発症し、以後、アルブミンを定期的に補充しながら諸治療を試してきたが効果は得られず、毎週入院の上アルブミンの点滴投与を受けざるをえない状況となっていた。年々、状態は悪化(Alb値は減少傾向で浮腫も増悪。栄養不足によるるい痩も増悪)。そこで、倫理委員会の承認と本人・家人の同意のもと、ミドドリン投与を開始した。少量から開始し、最終的には10mgの1日3回投与(米国・英国で起立性調節障害について認められている最高用量)まで増量した。血清アルブミン値の若干の上昇を認めたが、毎週のアルブミン静注の中止には至らなかった。副作用は見られなかった。【考察】ミドドリンの可能性などについて検討する。なお、この症例では次にリンパ管塞栓術を検討している。