The 56th Annual Meeting of Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

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デジタルオーラル

術後遠隔期・合併症・発達

デジタルオーラル(II)44(P44)
術後遠隔期・合併症・発達1

指定討論者:崔 禎浩(宮城県立こども病院 心臓血管外科)

[P44-3] スピロノラクトン大量療法が有用と考えられたFontan術後蛋白漏出性胃腸症の1例

磯 武史, 福永 英生, 真弓 怜奈, 若月 寿子, 松井 こと子, 古川 岳史, 高橋 健, 稀代 雅彦, 清水 俊明 (順天堂大学 医学部 小児科・思春期科)

Keywords:Fontan術後, 蛋白漏出性胃腸症, スピロノラクトン大量療法

【背景】蛋白漏出性胃腸症(PLE)はFontan術後の約4-10%に認められ、予後不良な合併症である。しかし、その発症機序は未だ不明であり、治療法も確立されていない。今回、スピロノラクトン大量療法を行い、寛解し得た症例を経験したので報告する。【症例】6歳女児。両大血管右室起始症、房室中隔欠損症、肺動脈閉鎖、左上大静脈遺残のに対し、生後9か月で両側Glenn術、同時期にアンブリセンタンを開始、1歳4か月でFontan術(TCPC)を施行した。TCPC後3年の肺動脈圧は18mmHgであった。5歳10か月(TCPC後4年6か月)より持続する下痢と眼瞼浮腫が出現し、低蛋白血症(総蛋白 3.4g/dL、アルブミン1.7g/dL、IgG 156mg/dL)、便中αアンチトリプシン増加(264mg/dL)を認め蛋白漏出性胃腸症と診断し加療を開始した。オクトレオチド皮下投与を行ったが症状改善は乏しく、肺血管拡張薬の変更(マシテンタン、タダラフィル)とともにスピロノラクトン大量療法を併用した。スピロノラクトン3mg/kg/dayから開始し、7mg/kg/dayまで漸増した。漸増とともに低蛋白血症は徐々に改善し、同治療開始後1か月で退院とした。肺動脈圧は治療開始前に18mmHgであったが、治療開始5か月後に15mmHg、11か月後に10mmHgまで低下した。現在も寛解を維持している。【考察】Fontan術後PLEは低心拍出量や中心静脈圧上昇による腸管循環障害、リンパ管内圧上昇、炎症系の活性化などが原因と推察されている。スピロノラクトンは除水作用だけでなく抗炎症作用も有し、本治療法が有用である機序の一つと考えられている。本症例も治療開始後に寛解を得られており、有用であった可能性が示唆された。【結語】Fontan術後PLEに対してスピロノラクトン大量療法は試みるべき選択肢の一つと考えられた。