The 56th Annual Meeting of Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

Presentation information

デジタルオーラル

術後遠隔期・合併症・発達

デジタルオーラル(II)47(P47)
術後遠隔期・合併症・発達4

指定討論者:泉 岳(北海道大学 小児科)

[P47-1] ANCA関連血管炎を合併したFontan術後の1例

江崎 大起, 松岡 良平, 土井 大人, 杉谷 雄一郎, 渡邊 まみ江, 宗内 淳 (九州病院 小児科)

Keywords:Fontan術後, ANCA関連血管炎, 脳出血

【はじめに】Fontan術後は低心拍出・高中心静脈圧を特徴とする血行動態に加え、潜在する血管内皮細胞障害や凝固異常、他疾患併発時に予期せぬ経過を辿ることが経験される。Fontan術後19年後に発症した重症ANCA関連血管炎を経験したので報告する。【症例】29歳男性。三尖弁閉鎖症に対して10歳時にFontan手術(Lateral tunnel法)を実施した。術後心臓カテーテル検査では、SpO2 90%、心係数 5.6 L/min/m2、中心静脈圧 14mmHgであった。NYHAI度でフルタイム就労していた。入院3か月前から発熱、咳嗽に加え左下腿痛と異常感覚あり近医で抗菌薬と解熱薬による加療を受けた。入院2か月前には左下腿浮腫と両下腿痛のため、再診し静脈血栓症として弾性ストッキングと解熱鎮痛薬で対応したが症状は改善しなかった。異常感覚が増悪し歩行障害のため当院へ紹介入院となった。入院時現症は、体温38.6度、両側下腿異常感覚以外、運動神経や深部腱反射を含め脳神経学的異常はなかった。血液検査:WBC 12400/μL、CRP 14.9 mg/dL、Dダイマー 9.9 μg/dL、蛋白尿・血尿なし。不明熱として鑑別をすすめたところ、血液検査でMPO-ANCA>300U/mLと高値であり、入院4日目に出現した全身斑状紅斑の皮膚生検で血管周囲へ好酸球を伴う炎症細胞浸潤を認め、ANCA関連血管炎(Churg-Strauss症候群:Eosinophilic perivascular angitis)と診断した。入院8日目からプレドニゾロンとシクロホスファミドによる治療を開始したが、入院17日目に左被殻出血による意識障害を生じ緊急開頭血腫除去術にも関わらず重度中枢神経後遺症を合併し寝たきり状態となった。治療継続したが病勢は軽快せず治療開始5か月半で永眠した。【考察】Churg-Strauss症候群では肺・腎合併症が多くその予後を規定するが、中枢神経合併症も散見される。Fontan術後の潜在する血管内皮障害と凝固異常等が影響し最重症の経過をたどったのではないかと考えた。