The 56th Annual Meeting of Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

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デジタルオーラル

術後遠隔期・合併症・発達

デジタルオーラル(II)47(P47)
術後遠隔期・合併症・発達4

指定討論者:泉 岳(北海道大学 小児科)

[P47-2] Fontan術後洞機能不全と心拍変動のばらつきの関連について

鍋嶋 泰典, 兒玉 祥彦, 倉岡 彩子, 石川 友一, 中村 真, 佐川 浩一 (福岡市立こども病院 循環器科)

Keywords:Fontan術後, 洞不全症候群, 心拍変動

[背景]Fontan術後に洞機能不全(SND)を合併することがあるがその進行の程度を示す客観的指標についての知見は乏しい。一方、心拍変動(HRV)のばらつきの指標である、連続する2心拍のRR間隔の差の標準偏差(SD1)とサンプル全体のRR間隔の標準偏差(SD2)がSNDの病態を反映しているという報告がある。
[目的]Fontan術後のHolter心電図よりSD1, SD2を求め、SNDの臨床像との関連を調べる。
[対象と方法]2017年以降当院でFontan術後にHolter心電図を施行された35例を対象とした(ペースメーカ留置(PMI)例は除く)。平均又は最低心拍数<-2SDであるSND群(12例)と非SND群(23例)に分け以下の項目を後方視的に比較検討した。1. 患者背景, 2. HF, LF/HFの日内変動, 3. SD1, SD2(Z score)4. SD1, SD2とCVP, BNP, peakVO2の相関
[結果]1. SND群は年齢中央値5(2-14)歳, 男/女 7/5例, 多脾症3例, 房室不一致2例で失神歴1例,後に2例がPMIとなった。非SND群は年齢 12(4-16)歳, 男/女 13/10で多脾症2例, 房室不一致2例で失神/PMI例はなかった。2. 日内変動消失例はSND群/非SND群で3/7例と有意差はなかった。3. SD1とSD2の平均値をSDN群/非SDN群で示すとSD1:1.52/-2.28、SD2:0.82/-0.94でともにSDN群が有意に高値であった。さらにSDN群内でSD1 Z score>2に有症状例、PMI例が含まれていた。4. SD1, SD2とCVP, BNP, peakVO2の相関係数はそれぞれ0.01/-0.05, -0.23/-0.23, 0.27/0.38でいずれも有意な相関を認めなかった。
[考察]Fontan術後非SND群はSD1,SD2とも小さかったのは潜在的な心不全に伴う交感神経の亢進が原因かもしれない。一方SND群はSD1, SD2ともに大きかったが,APCなど補充調律や洞静止が入るためと考えられた。特に洞静止がSD1を大きくする要因であり,症状や将来的なPMIのリスクと関連している可能性が示唆された。
[結語]Fontan術後でSD1 Z score>2の症例は、SDNを考慮したフォローが必要と思われる。