The 56th Annual Meeting of Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

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デジタルオーラル

術後遠隔期・合併症・発達

デジタルオーラル(II)50(P50)
術後遠隔期・合併症・発達7

指定討論者:木村 成卓(慶應義塾大学 外科(心臓血管))

[P50-4] 小児における安全な大腿動脈穿刺部位の検討

高橋 努, 水野 風音 (済生会宇都宮病院 小児科)

Keywords:大腿動脈穿刺, 動静脈瘻, 仮性動脈瘤

【背景】心臓カテーテル検査において大腿動脈穿刺は必須の手技であるが、動静脈瘻や仮性動脈瘤は穿刺に伴う重要な合併症である。大腿深動脈(DFA)の分岐部や動静脈が重なる部位を避け、鼠径靭帯より遠位部で穿刺することが大切で、成人では大腿骨頭の下1/3~1/4が安全な穿刺部位であり、鼠径靭帯から1~2cm下も基準となる。小児は成長に伴い血管の走行と大腿骨頭の位置関係が変化している可能性があり、同じ基準でよいだろうか。【目的】小児における安全な大腿動脈の穿刺部位を確認する。【対象】腹部造影CTを行った1~12歳の小児32.名(男性20名)の左右64本の大腿動脈【方法】Ziostation2を用いて解析した。(1)DFA分岐部(DFA点)と大腿骨頭の位置関係を計測。(2)大腿静脈が大腿動脈の背側に回り込む部位(FV点)と大腿骨頭の位置関係を計測。(3)鼠径靭帯中点からDFA点及びFV点までの距離を計測。(4)鼠径溝(皮膚の皺)中点からDFA点及びFV点までの距離を計測。【結果】計測値に男女差、左右差はなかった。(1)DFA点は大腿骨頭の上2/3に9本(14.1%)、下1/3に18本(28.1%)、大腿骨頭以下に37本(57.8%)。1歳以下でばらつきが大きかった。(2)FV点は大腿骨頭の上2/3に3本(4.7%)、下1/3に18本(28.1%)、大腿骨頭以下に43本(67.2%)。1歳以下でばらつきが大きかった。(3)鼠径靭帯中点からDFA点までの距離は10mm未満1本(1.6%)、10~20mmが9本(14%)。FV点までの距離は10mm未満1本(1.6%)、10~20mmが3本(4.7%)。(4)鼠径溝中点からDFA点までの距離は20mm未満34本(53.1%)。FV点までの距離は20mm未満26本(40.6%)、鼠径溝より上の例もあった。【考察】大腿骨頭の下1/3での穿刺は比較的安全であるが、約30%の患者にDFA点やFV点が含まれる。一方で鼠径靭帯から20mm以内にDFA点は15.6%、FV点は6.3%のみである。小児においては大腿骨頭よりも鼠径靭帯の方がより良い指標である。鼠径溝は体型によりずれるため普遍的な基準にはならない。