[P53-5] ASDに対する治療を断念した79歳女性
Keywords:高齢者, 心房中隔欠損, 心不全
【はじめに】高齢者の心房中隔欠損症(ASD)では、欠損孔による右心へ容量負荷以外に、肺高血圧や肺動脈の拡張、左室の拡張障害、心房細動等の様々な問題が混在しており、治療を行うべきか否かの判断が困難な場合がある。今回、術前のTEEおよび血行動態評価および閉鎖試験の結果、ASDへの治療を断念した症例を提示する。【症例】79歳 女性。身長 144.5cm, 体重 61.8kg。既往歴:冠攣縮性狭心症、一過性脳虚血発作、発作性心房細動、心尖部肥大型心筋症。前医で、利尿剤、β遮断薬、Ca拮抗薬、DOACにより管理されていたが、徐々に労作時呼吸困難が出現し、CT検査で肺動脈の拡張を認めたことから、精査目的で当院へ紹介となった。TEE上、ASD(二次孔)が確認され、23.7mm×15.4mm。rimは大動脈から上大静脈にかけて広範囲に欠損。カテーテル検査では、肺体血流比 1.53, 肺動脈圧 33/17 (25), Rp=4.5, 左房圧 7。ASD試験閉鎖で肺動脈圧 41/17 (26), Rp=1.9, 肺動脈楔入圧20と上昇がみられ、治療を断念した。【まとめ・検討】75歳を超える高齢者においてもASDの閉鎖は有用であることが報告されている(JACC: Cardiovasc Interv 2015;8:600-606)。一方で、高齢者では治療後に左室拡張障害による左房圧の上昇や肺うっ血を生じる可能性があり、治療前の肺動脈楔入圧が10mmHg以上の例や閉鎖試験で10mmHg以上の上昇を認める例では注意を要する(Catheter Cardiovasc Interv. 2001;52:177-80, 2005;64:333-7)。さらに、本症例では、広範なrim欠損を伴うASDであり、治療を行う場合、カテーテル治療が可能か外科手術を優先すべきか、さらに閉鎖する際はfenestration作成も考慮する必要がある。本症例では、治療前に十分な利尿剤を含めた心不全治療が行われている状況下で左房圧の上昇がみられたため治療は実施しなかった。血行動態評価の結果から治療の可否、さらに治療が可能であるならば治療方法に関して検討したい。