The 56th Annual Meeting of Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

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デジタルオーラル

成人先天性心疾患

デジタルオーラル(II)54(P54)
成人先天性心疾患2

指定討論者:笠原 真悟(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 心臓血管外科)

[P54-2] 繰り返す血栓性腎梗塞および慢性糸球体腎炎を発症した成人フォンタン術後 の1例

杉谷 雄一郎1, 宗内 淳1, 江崎 大起1, 松岡 良平1, 土井 大人1, 渡邉 まみ江1, 落合 由恵2 (1.九州病院 小児科, 2.九州病院 心臓血管外科)

Keywords:フォンタン術後腎障害, 血栓症, フォンタン腎症

背景:フォンタン手術を受けた複雑心奇形の患者は、遠隔期に中心静脈圧高値および組織低灌流に由来する合併症を生じる。腎臓に関しても近年遠隔期にGFR低下が報告されているが腎合併症の詳細は不明ある。フォンタン術後20年が経過し、繰り返す血栓性腎梗塞および慢性糸球体腎炎を発症し、腎組織診を施行した成人例を経験した。症例: 36歳男性。診断は完全大血管転位症、肺動脈狭窄、共通房室弁、両側上大静脈、無脾症候群。2歳時にoriginal 左BTシャント術を施行し、13歳時にフォンタン手術(心外導管径20mm)を施行した。24歳時に尿蛋白が出現し、30歳時に尿潜血陽性を示した。31歳時に下腹部痛を主訴に近医を受診し、造影CTで血栓性右腎梗塞を認めた。以降ワーファリンを内服した。34歳時に左側腹痛を主訴に当院を受診し、造影CTでは両側腎に楔状に欠損を認め両側腎梗塞と診断した。ウロキナーゼを投与し、ヘパリン持続点滴を行い症状は改善した。その後2か月後には右側腹痛を主訴に当院を受診。右腎梗塞再発を疑いヘパリン持続点滴を行い症状は軽快した。ワーファリンでは抗凝固のコントロールが難しくアピキサバンを導入し退院した。35歳時には胃腸炎罹患後に胸痛、呼吸苦を主訴に当院を受診。その際に体重増加(80→85kg)、下腿・顔面浮腫と低アルブミン血症(2.9g/dL)を認めた。尿蛋白の増加(3g/day)、尿潜血から慢性糸球体腎炎、ネフローゼ症候群を疑い開放腎生検を行った。病理組織診では、腎硬化病変および糸球体上皮障害を認めた。結論:フォンタン術後遠隔期の血栓塞栓症および中心静脈圧高値による腎硬化病変や腎糸球体上皮障害を生じフォンタン術後遠隔期腎合併症として注目すべき所見と考えられる。