[P54-4] 成人先天性心疾患の経過中に腫瘍性病変を認めた2例の検討
キーワード:ACHD, 悪性腫瘍, スクリーニング
【背景】成人先天性心疾患(ACHD)では繰り返しの放射線被曝や侵襲的治療,そして遺伝子異常などの影響により悪性腫瘍の合併は少なくない.また心疾患の重症度が治療選択に影響を及ぼす場合がある.今回当院通院中の患者で経過観察中に腫瘍性病変を認めた症例を経験したので当院での精査の取り組みも含めて報告する.【症例1】41歳女性,出生後,肺動脈閉鎖および両大血管右室起始症と診断され,姑息手術(waterstone手術,central shunt手術)を受けている.40歳時に下痢症状が続くため施行した下部消化管内視鏡でmicroscopic colitisと多発する大腸腺腫を認めた.大腸腺腫に対して内視鏡的粘膜切除術を施行したが,術後出血のため管理に難渋した.【症例2】39歳女性,1ヶ月検診で心雑音を指摘,無脾症,右胸心,右室型単心室,両大血管右室起始症,共通房室弁,肺動脈狭窄症と診断され,25歳時にfenestrated total cavopulmonary connection手術(f-TCPC)に至った.37歳時に腹痛の精査のため下部消化管内視鏡を行ったところ大腸腺腫を認め,内視鏡的粘膜切除術を行った.病理診断は早期癌であった.その後大腸癌再発はなく経過したが,39歳時に腹痛が再燃し精査を行ったところ進行子宮体癌を認めた.現在緩和医療を選択し,外来で経過観察を行っている.【考察】ACHD患者は背景の心疾患の重症度が高い場合,悪性腫瘍の治療の選択が制限される場合があり,早期の発見が重要となる.ただ,消化管内視鏡など侵襲的な検査の施行も心不全が背景にあると負担になる可能性があり,また,今回の症例のように早期に発見できたが,治療後の管理に難渋したり,重複癌を認める場合もある.今後,ACHD患者に対して早期に悪性腫瘍を発見するためそれぞれの患者に応じた低侵襲なスクリーニングの方法の検討が必要である.