The 56th Annual Meeting of Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

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デジタルオーラル

成人先天性心疾患

デジタルオーラル(II)54(P54)
成人先天性心疾患2

指定討論者:笠原 真悟(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 心臓血管外科)

[P54-5] 完全大血管転位, Senning術後の残存心房間シャントに伴う肺高血圧を合併した32歳女性に対して大血管スイッチ術を施行した1例

島田 空知1, 嘉川 忠博1, 前田 佳真1, 小林 匠1, 吉敷 香菜子1, 稲毛 章郎1, 浜道 裕二1, 上田 知実1, 矢崎 諭1, 和田 直樹2, 高橋 幸宏2 (1.榊原記念病院 小児循環器科, 2.榊原記念病院 心臓血管外科 小児)

Keywords:完全大血管転位, 大血管スイッチ術, 成人先天性心疾患

【背景】完全大血管転位(TGA)に対する心房間スイッチ術は,遠隔期において術後のbaffleleakや体循環ポンプとなる右室の機能低下,三尖弁逆流(TR)が問題視される。しかし,心房間スイッチ術後の成人患者におけるこれらの問題点に対する治療法は確立されていない。
【症例】32歳女性。新生児期にTGA(I型)と診断され,生後5か月でSenning術を施行された。残存心房間シャントがあり, 23歳時の心臓カテーテル検査では左右心室は等圧で,シャント閉鎖術は困難とされ,複数の肺血管拡張薬を導入し内科的治療を強化された。2度の妊娠,1児の出産を経て32歳時に精査を行った。TRはわずかで両心室機能の低下はなく,左室後壁厚,心室中隔壁厚は9mmと菲薄化を認めなかった。心臓カテーテル検査では,左室圧/右室圧 77/105mmHg, 平均肺動脈圧 51mmHg, 肺体血流比 1.8であり,酸素による急性肺血管拡張試験への反応を認めた(肺血管抵抗 8.3→4.4 U・m2)。肺動脈の可逆性及び左室の体循環としての耐用性があると判断し,肺高血圧の進行と将来的な右室機能低下のリスクを加味して大血管スイッチおよびSenning解除術を施行した。
術後は,左室機能不全のためImpella2.5を7日間,ECMOを8日間使用し,また約2か月間の血液ろ過透析,気管切開術を含めた呼吸補助を必要としたが,いずれも離脱できた。術後3か月にて,エコーでの推定右室圧は40mmHgと低下し,LVEF 42%と左室機能の改善傾向を認め,在宅酸素での自宅退院となった。
【結語】肺高血圧を合併した心房間スイッチ術後の大血管転位症例に対し,成人期に大血管スイッチ術を施行した。既報の乏しい治療戦略であり,今後のフォローアップが重要と考える。