第56回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

デジタルオーラル

成人先天性心疾患

デジタルオーラル(II)55(P55)
成人先天性心疾患3

指定討論者:打田 俊司(愛媛大学大学院医学系研究科 心臓血管呼吸器外科)

[P55-1] S-ICD (subcutaneous implantable cardioverter defibrillator)が手術待機と周術期管理に有用であった,総動脈幹症術後肺動脈狭窄/心停止蘇生後のACHD症例

小坂井 基史, 櫻井 一, 野中 利通, 櫻井 寛久, 村上 優, 鎌田 真弓 (中京病院 中京こどもハートセンター 心臓血管外科)

キーワード:植込み型除細動器, 成人先天性心疾患, 心臓突然死

症例は43歳男性.5歳時に総動脈幹症に対するRastelli型の心内修復術を施行された.仕事中に心肺停止となり,bystander CPRの後に搬送された.精査で severe PS, severe TRを認め,右心室に起因するVf/VTと診断,再手術の適応と判断され当院紹介となった.手術日まで2ヶ月ほどあり,アミオダロン,β受容体遮断薬の内服に加えてS-ICDを留置し,自宅退院となった.心停止から2か月半後に手術を施行した.S-ICDリードを胸骨正中よりも左に留置したことで,胸骨再正中切開は問題なく施行できた.大動脈基部拡大とARもあり,術式は大動脈基部置換術,右室流出路導管置換術,三尖弁形成術とした.長時間体外循環に伴う凝固障害のため開胸/ガーゼパッキングで手術を終え,術後4日で閉胸した.術後7日にICUでpulseless VTが生じたが,速やかにS-ICDにより除細動され,事無きを得た.本件は心停止症例であるため本来ならば速やかに再手術を行うことが望ましい.しかし複雑心奇形の成人期再手術が可能な施設は限定され,ある程度の待機期間が必要なことも少なくない.その間の二次予防にはICDが第一選択となるが,リード寿命の懸念,感染性心内膜炎ハイリスク症例での菌血症のリスク,三尖弁手術の必要性などによっては,S-ICDも有用な選択肢の一つとなる.