[P55-4] Turner症候群に対する大動脈基部置換術
キーワード:Turner症候群, 大動脈基部置換術, 大動脈解離
【背景】Turner症候群は大動脈拡大を来し若年での大動脈解離発症のリスクが高いと言われている。しかしその大動脈拡大に対する手術介入の適応についてはMarfan症候群のようにガイドラインで定められてはいないのが現状である。【症例】身長133cm、体重33kg(BSA 1.1)の39歳女性。小学校時に低身長のため医療機関を受診しTurner症候群と診断された。学童期の成長ホルモンの補充療法や、思春期のエストロゲン・プロゲステロン併用療法などを行っていたが現在は行われていない。職場の健診で心雑音が聴取され、精査にて大動脈二尖弁および重症大動脈弁閉鎖不全を認めた。LVDd 65mm、LVDs 51mm、LVEF 42%であり、手術適応と判断され当科紹介となった。Valsalva洞径38mm、上行大動脈径42mmと基部~上行大動脈の拡大を認めており、大動脈基部置換術(23mm ATS機械弁+26mm Gelweave Valsalva graft)を施行した。【考察】Turner症候群は、約3割に大動脈二尖弁を合併すると言われているが、大動脈二尖弁を伴わないものでも大動脈解離のリスクがあるとされている。さらにTurner症候群の大動脈解離平均発症年齢は30歳台と非常に若年であり、その危険性が報告されている。近年、閉経後女性のエストロゲン欠乏が大動脈瘤に影響を及ぼすことが議論されており、Turner症候群においてもエストロゲン欠乏が大動脈拡大の原因の一つである可能性が考えられる。またTurner症候群は低身長であるため、Marfan症候群に準じた大動脈径での手術適応は適さないと指摘されている。大動脈径を体表面積で除したAortic size index(ASI)>2.5cm/m2での手術介入が勧められており、本症例はASI 3.8cm/m2であった。【結論】Turner症候群の重症大動脈閉鎖不全および大動脈基部拡大に対して大動脈基部置換術を施行した一例を経験した。Turner症候群は低身長であり、体格に合わせた治療介入やフォローアップが必要である。文献的考察を含め報告する。