[P55-5] Fontan型手術後遠隔期に肝内結節性病変を認めた2例
キーワード:FALD, FNH-like lesion, MRI
【背景】Fontan型手術遠隔期に合併するFontan関連肝疾患(FALD)は、主に血液検査、腹部エコー検査で鑑別された後、他の画像検査が行われることが多い。今回私たちは、当初これらの検査では鑑別困難で、他の画像検査で肝実質内の結節性病変が明らかになった2症例を経験した。【症例1】20歳男性。三尖弁閉鎖に対して、5歳時右心耳肺動脈吻合によるFontan手術が行われた。以後無症状で経過したが、血清トランスアミナーゼ、血清肝線維化マーカーの軽度異常が持続した。19歳時の腹部エコーで肝実質病変を認めなかったが、大血管描出目的の胸部造影CTで偶発的に肝実質内に動脈相で濃染し、門脈相、平衡相で消失する肝内占拠性病変を複数認め、肝細胞癌が疑われた。Gd造影EOB-MRIを行い、動脈相で早期に高信号、肝細胞相で周囲と等信号になり、拡散強調相で異常信号を示さない複数の結節性病変を認めた。肝生検を行ったが悪性所見なく、限局性結節性過形成様病変(FNH-like lesion)と診断された。【症例2】20歳男性。両大血管右室起始、右室低形成に対して、3歳時にTCPC型Fontan手術が行われた。以後無症状で経過し、血清トランスアミナーゼ正常であったが、総ビリルビン、血清肝線維化マーカー軽度高値が持続し、shear wave elastography上の肝硬度は増加していた。当初の腹部エコーでは肝実質病変なく経過したが、17歳時に初めて肝実質内の高輝度スポットが複数出現した。腹部造影CT、Gd造影EOB-MRIを行い、症例1と同様な性状の結節性病変を複数認めた。肝生検を行ったが悪性所見なく、FNH-like lesionと診断された。【考察】血液検査、腹部エコー検査はFALDの進行を反映しない可能性があり、悪性所見を見落とさないためには、CT、MRI、肝生検等の他の検査を組み合わせた評価が必要であることが示唆された。