The 56th Annual Meeting of Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

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デジタルオーラル

成人先天性心疾患

デジタルオーラル(II)56(P56)
成人先天性心疾患4

指定討論者:石野 幸三(昭和大学病院 小児循環器・成人先天性心疾患センター)

[P56-6] 成人期における先天性心疾患の移行医療の課題

狩野 実希 (さいたま赤十字病院循環器内科)

Keywords:ACHD, 専門的医療, 移行医療

【背景】先天性心疾患の予後改善に伴い、患者が成人期を迎え、小児から成人への移行医療が重要視されてきている。一方で、医療環境によっては適切な医療が提供されない患者も存在する。【目的】今回、専門医療機関での診療機会がなく、治療時期を逸してしまった症例を経験し、移行医療の重要性と今後の課題についての問題点を明らかにする。【症例】65歳男性。幼少期から弁膜症と言われていたが、特にフォローはされていなかった。24歳時に健診異常から精査となり修正大血管転位症の診断を受けたが、問題ないとの認識にて専門医療機関での受診機会はなく一般内科の開業医でのフォローとなっていた。57歳で心房細動を発症し、60歳と62歳でカテーテルアブレーションを受けるも、63歳より循環破綻を伴う不整脈や心不全を繰り返すようになった。すでに著明な体心室右室機能低下と重症三尖弁逆流を呈しており、外科的治療介入が困難な状態であった。【考察】ACHD患者の予後は専門医療機関で医療を受けている患者の方が良好であることが報告されている。しかし、病識がなく適切な医療を受けられていない患者が存在し、治療転機や予後に影響を与えている可能性があると考えられた。【結語】今後の先天性心疾患移行医療において、いかに多くの患者や医療機関に対して正しい知識を広め情報の共有が得られるかが課題であり、幅広い啓蒙活動や教育を通して、適切な医療を受けられる体制を整える必要がある。