The 56th Annual Meeting of Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

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デジタルオーラル

肺循環・肺高血圧・呼吸器疾患

デジタルオーラル(II)58(P58)
肺循環・肺高血圧・呼吸器疾患1

指定討論者:岩朝 徹(国立循環器病研究センター 小児循環器内科)

[P58-4] Dasatinib併用維持療法中に肺高血圧を認めた急性リンパ性白血病の一例

平田 拓也, 松田 浩一, 赤木 健太郎, 武野 亨, 吉永 大介, 馬場 志郎, 滝田 順子 (京都大学医学部附属病院 小児科)

Keywords:Dasatinib, 肺高血圧, 小児

【背景】近年小児白血病治療の進歩が著しく、使用する薬剤が増加している。それに伴い、肺高血圧をきたす可能性のある薬剤を使用することも増加している。Dasatinibはチロシンキナーゼインヒビター(TKI)で慢性骨髄性白血病(CML)の治療で使われ、成人では非常にまれだが肺高血圧を合併することで知られている。しかし小児発症CMLが極めて少ないためか、Dasatinibによる小児の肺高血圧の報告はほとんど無い。【症例】8歳男児。フィラデルフィア染色体(BCR-ABL遺伝子)陽性急性リンパ性白血病に対し、Imatinibで治療を開始するも腹痛、四肢疼痛、D-dimer高値のため、同じTKIでBCR-ABL遺伝子により親和性があり副作用の報告が少ないDasatinibに変更し、強化・寛解・維持療法を行っていた。治療開始後71週の髄注後に体重増加(2kg)、聴診で3,4音を聴取し、胸部X-pで心拡大と胸水貯留、心エコーで右心系の拡大と右室収縮力低下、TR flow 3.4m/sと肺高血圧と心不全を認めた。酸素投与、利尿剤で全身状態を安定させ、心臓カテーテル検査を施行したところ、平均肺動脈圧は32mmHgで、Rp 8.47U・m2であった。Dasatinibに伴う肺高血圧を疑い、Dasatinibを一旦中止し、マシテンタン、タダラフィルを導入した。肺血管拡張薬導入後の心臓カテーテル検査では、平均肺動脈圧が15mmHg、Rp 1.71 U・m2と改善していた。酸素を中止し、一旦中止していた化学療法を肺高血圧の合併の報告が少ないnilotinibに変更して経過観察中である。【考察・結論】Dasatinibによる肺高血圧の発症は0.45%程度と言われており、その病態の解明はまだされていない。Dasatinib中止により肺高血圧が改善するという報告や、別のTKIに変更しても肺高血圧が進行した報告もあり、再維持療法中は特に慎重な経過観察が必要と考えられる。