The 56th Annual Meeting of Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

Presentation information

デジタルオーラル

肺循環・肺高血圧・呼吸器疾患

デジタルオーラル(II)59(P59)
肺循環・肺高血圧・呼吸器疾患2

指定討論者:石田 秀和(大阪大学大学院医学系 研究科小児科学)

[P59-4] 心室中隔欠損術後に肺高血圧症を合併したDown症候群患者の術前右心機能に関する検討

川村 順平, 塩川 直宏, 高橋 宜宏, 中江 広治, 上野 健太郎 (鹿児島大学病院 小児科)

Keywords:Down症候群, VSD, 右心機能

【背景】Down症候群 (DS) の中でも肺動脈閉塞性病変の強い症例では、心室中隔欠損 (VSD) 術後に遷延する肺高血圧を発症すると考えられている。DSの術後肺高血圧発症例では、術前から右心機能が低下している可能性がある。【目的】乳児期に手術を行ったVSD患児 57例 (他の心疾患を合併する例、DS以外の染色体異常を有する例、呼吸器合併症を伴う例を除く) を対象に、術前右心機能と術後在宅酸素療法(HOT)導入の有無について後方視的に解析し、有用性を検討した。【方法】 DS群と非Down (NDS) 群に分類し、患者背景、VSD術前の心臓超音波計測値を比較した。また、術後にHOTを導入したDown (HOT-DS) 群と導入しなかったDown (NHOT-DS) 群, NDS 群の3群に分け、比較検討した。【結果】DS群は19例 (33%) , NDS群は 38例 (67%)であった。手術時日齢, VSD径, Qp/Qsでは両群に差はなかった。DS群ではNDS群と比較して、低体重であった (中央値 4.9 kg vs. 5.5 kg , p=0.022) 。術前の右心機能では、RV FACが小さく (中央値 35.8% vs. 43.7%, p=0.022) , TAPSEが低値であった (中央値 11.9 mm vs. 14.1mm, p=0.002) 。また、術後HOTを有した例は7例 (12%) 存在し、すべてDS群であった。3群間の比較では、HOT-DS群はRA longitudinal strain (RA LS) (中央値 30% vs. 36% vs. 38%, p=0.05), TAPSE (中央値 11.0mm vs. 12.3mm vs. 14.1mm, p=0.0089) において、他の2群より低値であった。【考察】術後肺高血圧を伴うHOT-DSの群では、VSD術前から既に肺高血圧により右室収縮能低下や右室拡張末期圧上昇に伴う心房機能低下を認めており、肺血管閉塞性病変が強いことが想定される。DS児において、術前のRA strain, TAPSEは術後遷延性肺高血圧の予後予測因子になり得ると考えられた。