[P60-5] 小短絡の心室中隔欠損症に合併した遺伝性肺動脈性肺高血圧の一例
Keywords:心室中隔欠損症, 遺伝性肺動脈性肺高血圧, SOX17遺伝子
【はじめに】先天性心疾患(CHD)に合併する肺高血圧(PH)は染色体異常に伴うものや、短絡が多く高肺血流に伴うものが一般的である。今回我々は、小短絡の筋性部心室中隔欠損症(mVSD)のため経過観察していたが経過中にPHが増悪し、遺伝子検査によって遺伝性肺動脈性肺高血圧症(HPAH)と診断した症例を経験したので報告する。【症例】症例は1歳女児。在胎39週5日、体重3632gで当院にて経膣分娩で出生し、日齢4に心雑音を聴取され心エコーにてmVSDと診断された。欠損孔の径は2mm台と小さく肉柱部の欠損であり、その他CHDは認めず体重増加も良好に経過した。生後4ヶ月の時点で心エコーにてVSD短絡は両方向となりsevere PHの状態であった。心カテを施行し等圧のPHを認め、Qp/Qsは1.2だった。鎮静時に著明な上気道閉塞を認め、後に喉頭軟化症と診断した。気道閉塞によるPHの増悪も考慮し、肺血管拡張薬の内服と在宅でのnasal-CPAPを導入した。欠損孔に見合わぬPH所見であったため遺伝子検査を施行し、SOX17遺伝子異常を認め、HPAHと診断した。また、生来より左肩甲骨高位と頸椎癒合を認め、臨床的にKlippel-Feil症候群と診断したが、HPAHとの関連は不明である。【考察】SOX17遺伝子異常はCHDに合併するHPAHの原因遺伝子として報告されている既知の遺伝子異常である。短絡が小さなCHDに合併するPH患者において遺伝子検査を行うことは、治療に関しての意義は少ないが、将来的な予後の推定に関しては意義があると思われる。