The 56th Annual Meeting of Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

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デジタルオーラル

肺循環・肺高血圧・呼吸器疾患

デジタルオーラル(II)60(P60)
肺循環・肺高血圧・呼吸器疾患3

指定討論者:柴田 映道(慶應義塾大学医学部 小児科)

[P60-6] Ca拮抗薬が奏功した遺伝性肺動脈性肺高血圧症の1例

細川 奨1, 下山 輝義1, 長島 彩子1, 山口 洋平1, 渡邉 友博1, 石井 卓1, 土井 庄三郎2 (1.東京医科歯科大学 小児科, 2.国立病院機構災害医療センター 小児科)

Keywords:肺高血圧症, Ca拮抗薬, 血管攣縮

【背景】近年肺動脈性肺高血圧症(PAH)に対して標的治療薬が使用されるが、その中にCa拮抗薬が奏功する症例が存在する。今回我々は遺伝性肺動脈性肺高血圧症(HPAH)と診断した症例に対して治療を開始し、4年後にCa拮抗薬が著効することが明らかになった症例を経験したので報告する。【症例】10歳男子。6歳頃より労作時の息切れ、易疲労感が出現。小学1年の学校心臓検診で心電図異常を指摘されたことを契機に前医紹介。三尖弁逆流圧較差63mmHgの重症肺高血圧症が疑われ酸素投与を開始した後、当院に転院した。しかし当院での心臓カテーテル検査では、肺動脈圧(PAp)47/17(29)mmHg, 肺血管抵抗係数5.8Wood単位と想定外に低く、逐次併用療法を開始した。しかし標的治療薬によるPApの改善は想定外に悪く、診断時から1年で3剤併用療法となった。診断3年後のカテーテル検査中に自然覚醒した際、平均肺動脈圧が急激な上昇(25mmHg→50mmHg)を認め血管攣縮が疑われた。その後学校で運動後に失神発作を1度認めた。診断4年後のカテーテル検査中に故意に覚醒させると、PApは体血圧近くまで急激に上昇した。一方で20ppmの一酸化窒素吸入下では、覚醒によるPApの上昇は抑制された。このことからCa拮抗薬を開始したところ、自覚症状、心電図・心エコー所見は劇的に改善した。【考察】本症例から考え得るCa拮抗薬の有効なPAHを疑う点は、(1)心エコーと心臓カテーテル検査による肺動脈圧に大きな解離がある、(2)血行動態による評価と日常生活における症状に解離がある、あるいは(3)心臓カテーテル検査中の体動や覚醒で急激な肺動脈の上昇を認める、などが挙げられる。その一因として血管攣縮の可能性が考えられる。【結論】小児において日常の肺動脈圧上昇をカテーテル検査で正確に評価するために、覚醒時の圧データが有用である。