[P61-1] 先天性肺リンパ管拡張症を合併した総肺静脈還流異常症11か月男児
Keywords:肺リンパ管拡張症, 肺高血圧症, 総肺静脈還流異常症
【緒言】先天性肺リンパ管拡張症(CPL)は, 出生直後からびまん性に拡張した肺リンパ管による重度の拘束性換気障害をきたす.CPLの一部は総肺静脈還流異常症(TAPVC)や左心低形成症候群などの左心系閉塞性疾患に合併し,これらの多くは致死的である.【症例】生後11か月の男児.近医で在胎39週5日に体重3,266gで出生した.出生直後からチアノーゼをみとめ前医に搬送された.同院でTAPVC(Ib),心房中隔欠損症,および大動脈縮窄症と診断され,日齢1に修復術が実施された.術後に利尿薬およびボセンタンが開始され,日齢49日に退院した.生後4か月時に啼泣後に失神し,当院に入院した.心エコー検査で左肺静脈狭窄(PVO)(左肺静脈血流速度 2.4 m/s)および推定右室圧の上昇(85 mmHg)をみとめた.PVO解除のため前医に転院し,心臓カテーテル検査において肺動脈圧66/25(44)mmHg, 肺動脈圧/体血圧比0.80, 肺血管抵抗4.5 wood unit・m2で重症肺高血圧と診断された.しかし左肺動脈楔入圧15 mmHgとPVOは軽度で,手術適応はなかった.利尿薬の増量および非侵襲的陽圧換気で呼吸状態はいったん改善したが,生後10か月頃から水分投与量に依存して肺高血圧の寛解および増悪を反復した.生後11か月時に啼泣を契機とした肺高血圧の急性増悪により死亡した.病理解剖で著明な肺リンパ管の拡張をみとめCPLと確定診断した. 左PVOは軽度であった.【考察】本症例はTAPVC術後のPVOは軽度であったが,基礎にCPLによる拘束性換気障害が存在したことが重度の肺高血圧に寄与していたと考えた.明らかなPVOのないTAPVC術後肺高血圧症例では,CPLの存在を考慮し水分管理や肺高血圧治療をより厳格に行う必要がある.