第56回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

デジタルオーラル

肺循環・肺高血圧・呼吸器疾患

デジタルオーラル(II)61(P61)
肺循環・肺高血圧・呼吸器疾患4

指定討論者:松裏 裕行(東邦大学医学部 小児科学講座)

[P61-3] large VSDを二期的に閉鎖した重症CLD-PH合併の超早産児例-至適心内修復時期はいつか?

関根 麻衣1, 佐藤 竜太朗1, 川崎 秀徳1, 先崎 秀明2, 舛岡 歩3, 岩本 洋一1, 石戸 博隆1, 増谷 聡1 (1.埼玉医科大学 総合医療センター 小児科, 2.北里大学 小児科, 3.埼玉医科大学 国際医療センター 小児心臓外科)

キーワード:慢性肺疾患, 心内修復術, 肺血管

【目的】先天性心疾患に重症慢性肺疾患(CLD)・肺高血圧(PH)を合併すると、開心術(ICR)後に管理困難な肺血管攣縮が発生するリスクがある。こうした症例の至適介入時期は未確立である。重症CLD-PHを伴う大きな心室中隔欠損(VSD)に対し、肺動脈絞扼術を行って十分に肺の成長・改善を待ち、二期的にVSDを閉鎖した超早産児例を報告する。
【症例】児は在胎23週4日、540g、Apgar 4/8で出生し、長期に呼吸管理に難渋した。肺動脈弁下に2mmの大きなVSDを認め、重度のCLD(III)を合併した。3ヶ月時に抜管できたが、呼吸状態は増悪し、酸素需要の増大を認めた。肺血管拡張療法下でも左心容量負荷所見に乏しく、右左短絡増悪を伴う低酸素血症を反復した。1歳5ヶ月、心エコーでVSD 7mmの両方向性短絡で、LVDd 28.5mm(112%N)、PR多量で圧較差が65mmHg(体平均血圧64mmHg)と著高を示したが、左房容量負荷所見を認めるようになったため、手術可能性を考慮し心臓カテーテル検査(カテ)を施行した。全身麻酔下、FiO2 0.6でPaO2 67mmHgと低値だが、肺動脈圧48/18(32) mmHg、大動脈圧62/43(51) mmHg、Qp/Qs 2.5、Rp 2.6 U・m2で、呼吸を十分に保てば高肺血流・比較的低肺血管抵抗であった。重症CLDを考慮し、1歳6ヶ月でまず肺動脈絞扼術を行った。心不全・呼吸状態は改善し、気管切開・HOTで退院できた。その後の発育は良好で、年齢によるCLDの改善を待ち、4歳のカテで、酸素負荷前後でmPAP 26, 22mmHg、Rp 6.1, 2.9 U・m2、Qp/Qs 0.85, 1.6であった。ICRはイベントなく終了した。術後一年でmPAP 18, 21mmHg、Rp 4.0, 3.5 U・m2と良好に維持でき、肺血管拡張療法を継続している。
【考察】本例は一歳時のカテ評価から、この時点のICRも考慮されたが、重症CLDを考慮して二期的治療とし、4歳でICRを行った。重症CLD合併VSDで、CLDの改善をどこまで待機してICRすべきかを明らかにするには、多施設による症例蓄積を要する。