第56回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

デジタルオーラル

肺循環・肺高血圧・呼吸器疾患

デジタルオーラル(II)61(P61)
肺循環・肺高血圧・呼吸器疾患4

指定討論者:松裏 裕行(東邦大学医学部 小児科学講座)

[P61-4] 小児の静脈血栓症2例の治療経験

近田 正英1, 宮入 剛1, 北 翔太1, 麻生 健太郎2, 水野 将徳2, 桜井 研三2, 中野 茉莉恵2 (1.聖マリアンナ医科大学 心臓血管外科, 2.聖マリアンナ医科大学 小児科)

キーワード:静脈血栓, 肺梗塞, 小児

(はじめに)小児は成人と比較して血栓症の頻度は低いと言われていて、小児の止血機序の特異性、血管内皮細胞の抗血栓性のためと考えられている。最近3年間で2例の静脈血栓症を経験したので報告する。(症例1)5歳男児。急性リンパ性白血病で、ポートを作製し中心静脈カテーテルから抗がん剤投与中に、まずカテーテル先端に血栓様索状物がついたのち、右房後壁に血栓が付着した。カテーテルを抜去し、ヘパリンの持続投与を施行した。しばらく血栓は存在したが、肺塞栓症を起こすことなく、約3か月後血栓は徐々に縮小して消失した。(症例2)14歳女性。一週間前から頭痛、吐き気、嘔吐があり、胃腸炎の疑いで脱水症状が強いため補液目的で入院となった。入院後意識レベルの低下があり、心筋炎を疑い、心臓超音波検査を施行し、肺高血圧、三尖弁閉鎖不全症と診断された。酸素化が悪化したため、挿管しNO吸入を開始し、ドブタミンとミルリノンの投与も開始した。循環が安定しないため、さらにエポプロステノールを開始し、レバチオを注腸で投与した。それでも状態が改善しないため、PCPSを装着する準備をしていた所心停止となり、心臓マッサージを施行しながらPCPSを装着した。PCPS装着後の肺動脈造影で多数の肺動脈血栓が認められたため、開心術に移行した。心拍動下に左右肺動脈を切開して、鋳型状の血栓を除去した。人工心肺離脱時に再度肺高血圧となり、PCPSを再装着した。第4病日にPCPSを離脱した。術後の造影CTにて肺動脈の血栓は末梢にわずかであったが、全脳虚血後の所見とSAHが認められた。第6病日から再び循環が悪化し、脳所見からPCPS再装着は行わず、第9病日に死亡した。(結語)小児の静脈血栓症は、症例1のように基礎疾患を有する症例がほとんどであるが、症例2のように基礎疾患が不明で重篤な転帰をとることもある。今回注意を喚起するためにも報告した。