[P63-1] 当院の先天性門脈体循環シャント症例の臨床検討
Keywords:肺高血圧症, 先天性門脈体循環シャント, 心血管系奇形
【背景】先天性門脈体循環シャント(CPSS)は稀だが,様々な先天奇形に加え後天的に肝肺症候群(HPS)や門脈性肺高血圧症(PoPH)なども合併するため,早期の診断治療とともに長期の観察も重要である.【方法】当院の電子カルテから,2005年以降にCPSSと診断された症例を抽出し,その診断および治療経過,心血管系などの先天奇形や後天性の合併症の臨床経過,および予後についてを後方視的にコホートした.【結果】対象は9例,診断時年齢は中央値で日齢43(0日-2歳8か月),7例は新生児マススクリーニングで高ガラクトース血症を認めた.5例は開腹術後またはカテーテル治療後で,1例は乳児期に自然閉鎖したが,2例は門脈本幹欠損で肝移植待機中である.8例が心血管系奇形を合併し,心内奇形のないIVC欠損 1例,DORV+PSでBTシャント術後だが突然死した1例,VSD 2例とincomplete AVSD 1例はBVR施行済,VSD+ASD 1例と21 trisomyに合併したPDA 1例は小短絡のため手術を要しておらず,LVNCを伴ったunbalanced AVSDの1例はTdPも発症したためGlenn手術と同時にICDを埋込み,CTでCPSS閉鎖後の門脈圧を推定しながらFontan待機中である.HPS合併はいないが,心内奇形のないIVC欠損の1例において,CPSS閉鎖術後の12歳時に初めてエコーでRVp>LVpの重度のPHの所見を認めた.タダラフィル・マシテンタン・セレキシパグ導入後の評価では,NYHA分類 1度,BNP 9.4pg/mL,6分間歩行試験 519m,心臓カテーテル検査ではmean PAp 35mmHg,PAwp 5mmHg,Rp 6.0WU/m2,CI 5.0L/min・m2で,現在も定期観察中である.【結語】当院ではCHD合併例が多く,PoPHを合併したのは1例のみであったがCPSS閉鎖後に発症していた.PHは,肝移植適応例ではハイリスク因子であるだけでなく,CHDの治療方針にも影響を与えるため,CPSSについては小児循環器科医も大いに関心を寄せるべきである.