[P63-4] 肺血管拡張療法にて肺水腫をきたし、肺静脈閉塞性疾患が疑われるダウン症候群の1例
Keywords:肺静脈閉塞性疾患, 肺高血圧症, ダウン症候群
【はじめに】大きな心内奇形を伴わない肺静脈閉塞性疾患の頻度は少ないが、肺高血圧の原因であり、ダウン症候群や癌の転移症例などで報告がある。今回、ダウン症候群児に肺動脈性高血圧の治療を導入したところ、高度の肺うっ血をきたし、肺静脈閉塞性疾患に伴う肺高血圧症が強く疑われる症例を経験した。肺高血圧の鑑別として重要と思われたので報告する。【症例】女児。臍帯血流異常のため30週2日、820gで出生し、染色体検査でダウン症候群と診断した。超音波検査にてASD(5mm)を認めるも肺高血圧所見は生理的範囲内で経過した。生後2か月から呼吸障害が出現し、咽頭/喉頭軟化症を認めHFNCを装着して呼吸状態は改善した。生後3か月に再度呼吸状態が増悪し、著明な肺高血圧を認めた。超音波検査で肺静脈狭窄は認めず、造影CTでは肺静脈還流異常を認めなかったので肺動脈性肺高血圧と診断し酸素投与、ボセンタン、シルデナフィル投与を開始した。その後、肺うっ血となり、感染も合併し重度の呼吸不全に陥ったので、人工呼吸管理を開始した。エポプロステノールを低用量で開始したが、初期量で肺水腫をきたしたので中止した。造影CTで肺静脈低形成、狭窄の評価は難しいが、治療経過から肺静脈閉塞性の病態が肺高血圧の原因であると考えられた。体重が2kg台と小さいため発育を待ち、心臓カテーテル検査や肺生検など精査を進めていきたいと考えている。【考察】肺静脈閉塞性疾患は、特発性肺動脈性肺高血圧症に症状が酷似しているが、肺血管拡張療法にて肺水腫を来し、予後不良であるため鑑別が重要である。非常に稀な疾患で、乳幼児ではダウン症候群に合併した報告例が数例ある。ダウン症候群では心臓、気道、肺などで種々の因子で肺高血圧となるが、本症例のように乳幼児期から進行性の肺高肺血圧があり、肺血管拡張剤で肺うっ血をきたした際には肺静脈閉塞性疾患も考慮する必要がある。