第56回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

デジタルオーラル

心血管発生・基礎研究

デジタルオーラル(II)64(P64)
心血管発生・基礎研究

指定討論者:廣野 恵一(富山大学医学部 小児科)

[P64-1] 新生児期に重篤な不整脈を示したLQT3患者2名のiPS細胞由来心筋細胞を用いたin vitroモデルの心機能評価

古谷 喜幸1, 羽山 恵美子1, 川口 奈奈子1, 島田 光世1, 松岡 瑠美子2, 稲井 慶1, 中西 敏雄1, 杉山 央1 (1.東京女子医科大学 循環器小児・成人先天性心疾患科, 2.若松河田クリニック)

キーワード:Nav1.5, LQT3, iPS

【背景】遺伝性心疾患患者のiPS細胞から分化誘導して得られる心筋細胞(iPSC-CM)は、患者心筋細胞に代わり、先天性心疾患や遺伝性不整脈を引き起こす遺伝子変異による細胞機能変化の評価に用いることができる。QT延長症候群(LQTS)3は、SCN5A遺伝子の機能獲得型変異によって引き起こされる。【目的】新生児期に重篤な不整脈を示したLQT3患者(SCN5A遺伝子ヘテロ接合体変異(R1623Q)を持つ)2名のiPSC-CMを用いて心筋細胞の機能評価を行う。【方法】患者末梢血から不死化B細胞株を作製し、山中因子を導入してiPS細胞株とし、CHIR99021やIWP4を順に添加する接着培養法によりiPSC-CMを分化誘導した。多点平面微小電極システム(MED64, Alpha MED Scientific)を用いて単層のiPSC-CMの外部電流を測定し、電界電位持続時間(FPD)を得て、Fridericia法により補正したFPDcF(心電図のQTc間隔に相当)を算出した。またオートパッチクランプ法(Syncropatch 384 PE, Nanion Technologies)によるiPSC-CMの電気生理学的な検討を行った。【結果】LQTS3患者iPSC-CMのFPDcF値は健常者と比較して有意に長かった。15~30nMのIKr特異的ブロッカーE4031を添加すると、健常者のものと比べて患者iPSC-CMでは早期後脱分極(EAD)が多発した。また患者iPSC-CMのNa電流の不活性化の遅延や後期Na電流の増加が認められた。【結論】重篤な不整脈を生じた患者2名のiPSC-CMを用いて、顕著なQT延長、EAD発生、Na電流の不活性化の遅延、後期Na電流の増加を検出した。このiPSC-CMを用いた心疾患モデルはLQT3の評価に有効と考えられる。