[P65-1] 初回治療前に冠動脈病変を合併した川崎病の転帰
Keywords:Kawasaki disease, coronary artery lesion, outcomes
【目的】初回治療前に冠動脈病変(CAL)を合併した川崎病(KD)のCAL残存リスクを明らかにすること。【方法】2004~18年に当科で免疫グロブリン療法(IVIG)を受けたKDのうち、治療開始前にCALを合併していた5例(前CAL群)の臨床・検査所見を後方視的に検討した。同一期間に初回心エコーでCALを合併していなかった207例(非CAL群)を対照として、2群間の臨床・検査所見、CAL残存率を比較検討した。CAL診断はJapanese criteriaに従った。【結果】前CAL群の内訳は男/女=4/1例、発症年齢中央値2歳9カ月(範囲、5カ月~3歳1カ月)、主要症状数5 (3~6)、初回IVIG開始病日9 (6~12)、全例がIVIG反応例であった。CALの部位は3例が両側、2例が左側で、最大内径は3.0~5.6mmであった。CALの診断病日は第6~11病日で、CALが残存したのは、第30病日で2例、発症から1年後で1例であった。2群間(前CAL群 vs. 非CAL群)の臨床・検査所見の比較検討結果で有意差が認められたのは、初回IVIG開始病日(中央値9 vs. 5, P = 0.001)と開始病日が第6病日以降の頻度(100.0% vs. 39.6%, P = 0.011)であった。前CAL群vs. 非CAL群のCAL残存率は、第30病日で2/5 (40.0%) vs. 2/207 (1.0%)、P = 0.003、発症から1年後で1/5 (20.0%) vs. 1/207 (0.5%)、P = 0.047であった。初回IVIG開始病日が第6病日以降と前CAL群を従属変数、CAL残存を目的変数とした多重ロジスティック回帰分析を行なった結果では、前CAL群のみが有意の関連因子で、P値とオッズ比は、第30病日で<0.001と68.3、1年後で0.009と51.5であった。発症から1年後の残存CALの部位とサイズは、前CAL群では右巨大瘤、非CAL群では右中等度瘤であった。【結論】治療開始前にCALを合併したKDでは、CAL残存リスクが高い可能性がある。初診時治療開始前の第6病日に既に中等度瘤を合併した症例では、初回IVIG反応例でも、巨大瘤形成と残存に注意が必要である。