[P65-5] 自然に解熱傾向後に冠動脈瘤が出現し不全型川崎病と診断した乳児例
キーワード:Incomplete Kawasaki disease, Infant, coronary artery aneurysm
【背景】川崎病は高熱が持続する疾患とされている一方で、早期自然解熱例や発熱を認めない例での冠動脈病変の報告が散見される。自然経過で早期に解熱する川崎病の臨床像は明らかになっておらず治療方針も定まっていない。【症例】症例は5ヶ月女児。第1病日に熱源不明の発熱(CRP 2.41mg/dL)のため入院となり、抗生剤を開始したが効果は乏しかった。入院後発疹と眼球結膜充血が出現したが、それぞれ第5病日、第7病日に消退した。また第5病日以降は間欠熱となったため経過観察していたが第7病日の血液検査でCRP 3.40mg/dLと改善なく、心臓超音波検査で冠動脈病変は認めなかった。第9病日に右冠動脈瘤(2.6mm、Z score : 4.65SD)を認めたため不全型川崎病と診断しガンマグロブリン大量療法(2g/kg)を行った。その後は36℃台の熱型で推移し、第12病日にCRP 0.76mg/dLと改善を認めたが第15病日にCRP 0.65mg/dLと改善に乏しかったため、ガンマグロブリン大量療法(2g/kg)を追加した。第17病日にCRP 0.40mg/dLと改善を確認し、第19病日に退院となった。第18病日の右冠動脈径は2.8mmであった。第33病日にCRP 0.05mg/dLであり、右冠動脈径は2.5mmと縮小傾向を認めた。後方視的にサイトカインおよびNT-pro BNPを測定したところ、初回ガンマグロブリン投与前(第7病日)のサイトカインはIL-6が36pg/mL(正常値 <5pg/mL)と優位に高く、NT-pro BNPは1260pg/mLと高値を示していたが、投与後(第12病日)ではIL-6は<3pg/mL、NT-pro BNPは486pg/mLと低下していた。【結語】川崎病疑い症例において解熱傾向後も川崎病は除外すべきではなく、特に乳児例の自然に解熱する川崎病では冠動脈瘤合併のリスクが高いことが報告されているため、解熱傾向の川崎病疑いの乳児例に対しては積極的な治療介入が必要である。