[P67-1] 川崎病診断におけるBCG接種痕の発赤の有用性に関する検討を目的とした後ろ向き研究
Keywords:川崎病, BCG接種痕発赤, 診断の手引き改訂
【背景】2019年に「川崎病診断の手引き」が改訂され、BCG接種痕の発赤が主要症状に加わった。【目的】BCG接種痕の発赤を認める患者の臨床的特徴や診断基準改訂による診断結果への影響を検討する。【方法】2016年1月から2019年10月に川崎病と診断し入院した165例を対象に診療録から後方視的に情報収集し、BCG接種痕の発赤を主要症状とした場合の診断病日や診断確度の変化について検討した。またBCG接種痕の所見により発赤群(R群) と非発赤群(NR群)に分類、さらにBCG接種痕の発赤が不定形発疹に先行したか否かで発赤先行群(RE群)と発赤非先行群(RL群)に分類して各群間で臨床的特徴を比較検討した。【結果】165例のうちR群は68例(41.2%)、NR群97例(58.8%)であった。R群のうちRE群は16例(23.5%)、RL群は52例(76.5%)であった。R群とNR群では新旧診断基準で診断病日に有意差はなく、定型例の割合に変化はなかった。また、R群のうちRE群とRL群を比較した場合も診断病日や定型例の割合に変化はなかった。R群はNR群と比較し低月齢で(p<0.001)、CRPが低値(p=0.001)、好中球比率が低値(p=0.001)であった。R群のうちRE群はRL群と比較して低月齢で(p=0.009)、血清Naが高値(p=0.005)、好中球比率が低値(p=0.001)であった。診断病日が短縮した症例2例、診断確度が変化した症例2例を確認した。【考察】診断基準改訂による診断精度の向上や診断日数の短縮を有意差を以て示せなかったが、少数例での検討であったこと、BCG接種部位の所見に関する記載が不十分だったこと等が影響したと考えられ、より多くの症例を対象とした比較研究等により新診断基準の有用性が明確に示されることが期待される。一方、BCG接種痕の発赤とCRPや好中球比率が負の相関を示したことは、BCG接種後の一定期間では川崎病発症時に接種部位の遅発性過敏反応により通常とは異なる免疫系が賦活化されて発赤が生じ、CRPや好中球比率が低値となる可能性が考えられた。