[P67-4] 術前精査でもやもや病を認めた川崎病後両側巨大冠動脈瘤と慢性閉塞病変に冠動脈バイパス術を施行した1例
キーワード:川崎病, 慢性閉塞病変, もやもや病
<背景>もやもや病は,両側内頚動脈終末部に慢性進行性の狭窄を生じ,代償的に脳底部に異常血管網が形成される原因不明の疾患で、時に冠動脈に狭窄および閉塞病変を来すことが報告されている。また川崎病罹患歴のあるもやもや病の報告もなされている。今回両側巨大冠動脈に対する冠動脈バイパス術の術前精査で偶発的に認めたもやもや病合併例を経験したため報告する。<症例>12歳、男児。生後3か月時に原因不明の高熱が1か月継続し、心嚢液貯留をきたすことから心嚢液ドレナージを行った。その際に両側巨大冠動脈瘤が指摘され、不全型川崎病(主要症状:発熱)と診断された。10歳時の心筋シンチでLAD末梢の心筋虚血を指摘され、CABG目的に当科へ紹介された。CAGにて左前下行枝(LAD)#5-6-11にかけ、9.3mm×18.2mmの巨大冠動脈瘤、#8の慢性閉塞病変(CTO)、右巨大冠動脈の巨大冠動脈瘤と完全閉塞を認めた。CTOに対しPCIを試みたがwireは通過せず、カテーテル治療は困難としCABGを行うことにした。しかし術前精査にて偶発的にもやもや病を認めた。頭部MRI・脳SPECTでは、右中大脳動脈側方から後方領域からPCA領域に軽度から高度集積低下を認め、もやもや病による脳循環不全が示唆された。無症状であること、もやもや病の外科手術が心臓手術時の脳梗塞・脳出血のリスクを軽減するエビデンスがないことから、冠動脈バイパス術を優先することとし、CTO部位にOnlay Patch法によるCABGを施行した。<考察>川崎病は急性期のみならず,慢性期にも血管内膜に炎症が持続することが指摘される。もやもや病は原因不明の進行性脳血管閉塞症であり、病理所見は血管内膜の肥厚と中膜の変性などを認める。本症例のCTO部位に瘤は認められず、CTOの原因としてもやもや病の関与が疑われた。