[P67-5] MERSを合併した川崎病の一例
キーワード:川崎病, MERS, ステロイドパルス療法
【背景】MERS(clinically mild encephalitis/encephalopathy with a reversible splenial lesion)は小児急性脳症で2番目に頻度が高く、学童から思春期に見られる。しかし、川崎病における脳炎脳症の合併例は0.1%と少なく、M E R S合併例の報告もあるが治療法は確立されていない。今回、M E R Sを合併した川崎病に対して、IVIG療法とステロイドパルス療法を併用し、冠動脈後遺症を来すことなく軽快した症例を経験したので文献的考察を含め報告する。【症例】7歳女児。1週間前より発熱が出現、近医でインフルエンザA陽性となりイナビルで加療されていたが、症状持続し炎症反応高値のため前医を紹介受診。第5病日に川崎病(主要症状5/6,群馬スコア3点)と診断、IVIG2g/kgで治療開始した。第6病日夜間よりせん妄が出現、発熱持続、炎症反応もさらに上昇したため第7病日にIVIG再投与し、インフルエンザを確認しASA50mg/kg/day、PSL2mg/kg/dayを追加した。解熱するも夜間虫が見えるなど症状増悪、見当識障害も増悪した。第8病日に頭部M R Iを試行、DWIで脳梁膨大部に高信号、ADCで同部位の低信号を認めMERSの診断となり、当院へ転院。入院時、明らかな見当識障害は認めなかったが、小脳症状を認めた。ステロイドパルス療法を3日間行い、以後は川崎病治療を継続した。神経症状は徐々に改善し、第17病日に頭部M R Iを再試行し脳梁膨大部病変は消失、冠動脈および神経学的後遺症なく第25病日で退院した。【考察】MERSは低ナトリウム血症との関連が報告されており、水・電解質の不均衡から脳浮腫を来し多彩な神経症状を認める。殆どは経過観察のみで軽快するが、年長発症が多く、川崎病合併例では低ナトリウム血症と共に冠動脈病変の危険因子であり早期にステロイドを含めた治療強化が必要と考える。【結語】MERS合併の川崎病例に対して、ステロイドパルス療法を含む積極的なステロイド治療で冠動脈後遺症なく軽快した。