[P71-1] 冠攣縮性狭心症の小児例
Keywords:冠攣縮性狭心症, 小児, アセチルコリン負荷試験
【背景】冠攣縮性狭心症は小児ではまれであり、アセチルコリン(ACh)負荷試験により確実に診断された症例の報告は少ない。今回、初回発作で診断に至った男児例を経験した。【症例】12歳男児。既往歴、心疾患の家族歴なし。午前4時に胸を押さえて唸っているところを母親が発見、救急搬送された。締め付けられるような前胸部痛で、嘔気を伴っていた。胸痛は30分間持続、受診時には症状はなく、心臓超音波検査、心電図で異常を認めなかったが、トロポニンIが1123.6pg/mlと異常高値であった。冠動脈CTでは異常を認めなかった。冠攣縮性狭心症を疑い、全身麻酔下にACh負荷試験を行った。左右冠動脈内にAChを注入。左冠動脈では50μg投与後に前下行枝、回旋枝に広範な90%狭窄、右冠動脈では20、50μg投与後に房室結節枝、後下行枝に75%狭窄を認め、著明なST上昇を伴った。右冠動脈への投与後、徐脈となりペーシングレートとなった。ニトログリセリン、ニコランジルの冠動脈注入で攣縮の改善を確認し検査終了した。全身麻酔下であり症状の再現性は確認できなかったが、翌日の検査でトロポニンIの上昇が確認された。アムロジピン1.25mg/日内服にて症状の再燃なく経過している。【考察】小児期発症の冠攣縮性狭心症はまれであるが、成人例と比較し高率に心筋梗塞を合併するとの報告もあり早期診断が重要である。診断に至るためにはより丁寧かつ確実な問診が求められる。確定診断には成人同様にACh負荷試験による症状誘発が重要であるが、小児では全身麻酔を要するため症状の評価が不可能である。トロポニンは発作時の小児特有の症状の曖昧さを補完するだけでなく、全身麻酔下のACh負荷試験において客観的な判定の一助となる。【結語】初回発作後にAch負荷試験で診断した冠攣縮性狭心症の小児例を報告した。小児例では小児特有の視点で診断を行う必要がある。