[P71-2] 小児期発症冠攣縮性狭心症の2症例
Keywords:冠攣縮性狭心症, 小児期, 冠攣縮誘発試験
【背景】小児期発症の冠攣縮性狭心症(coronary spastic angina :CSA)は極めて稀である. 【症例1】11歳男児. 胸痛の既往なし. 朝方に胸部絞扼感を自覚し受診, トロポニンIが陽性で, 硝酸薬の内服により胸痛が消失した. 運動中に胸痛は誘発されず, 運動後の休憩時に胸痛を生じた. 冠動脈CTでは右冠動脈はやや低形成であった. マスターダブル負荷心電図とホルター心電図では明らかな虚血性変化を認めなかったが、アセチルコリン(ACh)負荷冠攣縮誘発試験にて左前下行枝・回旋枝の攣縮と心電図左側胸部誘導のST低下を認め, CSAと診断した. 胸痛は夜間から朝方に生じることが多く, 程度が強いと意識レベルの低下を伴った. Ca拮抗薬内服にて胸痛は軽減し, 硝酸薬貼付の追加にて症状はほぼ消失した. 発症5か月目頃から怠薬しても胸痛を自覚することがなくなり断薬していたが, 11か月目に過換気により狭心痛の再発を認めた. 【症例2】19歳女性. 16歳時に線維筋痛症と診断されている. 受動喫煙をきっかけに胸痛を繰り返すようになった. 胸痛は時間帯によらず起こり, 線維筋痛症の疼痛とは区別できる痛みの性状であった. 硝酸薬貼付が部分的に効果あり, ACh負荷試験では冠動脈の攣縮は確認できなかったが, 胸痛の再現と心電図の虚血性変化を認め, Ca拮抗薬の内服にて胸痛が消失したことから微小血管狭心症と診断した. 胸痛のコントロールにはCa拮抗薬の増量が効果的であった. 9歳時に胸痛を繰り返した既往があり, 当時はストレスによる心因性胸痛と診断されていたが, 冠攣縮が原因であった可能性がある. 【考察】症例1はCSAとして典型的な症状を呈し, ACh負荷試験により確定診断に至った. 一時症状の改善がみられたが, 胸痛の再現あり今後の投薬継続については再考を要する. 症例2は, 約10年の間隔を開けて再発したCSAであり, 小児期発症の冠攣縮狭心症の自然歴の一例として興味深い症例と考えられた.