[P71-5] 多発冠動脈狭窄および高血圧を認める男児例
Keywords:冠動脈狭窄, 心筋炎, 高血圧
【背景】小児期に診断される冠動脈狭窄病変の多くが川崎病や先天性心疾患に関連している。今回それらを伴わない多発冠動脈狭窄を来した男児例を報告する。【症例】9歳男児、生後11か月に急性胃腸炎で入院、その際に心雑音を認めた。心エコーで心収縮は維持されていたが心拡大(LVDd=32.3mm, 122% of normal)と僧帽弁逆流(MR)を認めた。心拡大、MRは次第に改善したが体高血圧(収縮期血圧=120mmHg程度)あり、精査にて分腎レニン値に左右差を認めた。降圧剤(ルベジロール、アムロジピン、エナラプリル)を順次開始し、収縮期体血圧は115mmHg±10mmHgで推移。7歳時の心電図でST-T変化を認め、運動負荷心電図および心筋シンチで虚血所見あり。8歳でカテーテル検査を再検、冠動脈造影で左冠動脈の多発狭窄と右冠動脈からの側副血行路を認めアスピリンを追加。多発狭窄は半年後に行った硝酸薬を使用した冠動脈造影でも変わらず、冠動脈攣縮ではなく狭窄と判断。右心系の圧は正常で、右室心筋生検では軽度の心筋肥大あり。MRIのT1 mappingで心内膜側に軽度の虚血様変化を認めた。MRAでは脳血管に異常なく、腎動脈含めた腹部血管の造影の再検でも狭窄病変を認めず、引き続き外来で降圧剤とアスピリンを継続している。【考察】川崎病を疑う病歴、心疾患や代謝疾患を疑う家族歴はなく、現時点で多発冠動脈狭窄の原因や高血圧との関連は不明である。もやもや病に冠動脈狭窄を合併するという報告もあるが、本例はMRAで異常を認めず。感染にともなう急性心筋炎後に一過性ながら冠動脈狭窄をきたすという報告もあり、本例での初診時の症状およびその後の経過を含め合致する可能性がある。高血圧が冠血流を維持するために生理的な代償として起こるのであれば本例の一元的な病態説明も可能と考えられる。【結語】稀ではあるが心筋炎罹患後には冠動脈狭窄をきたす可能性もあり、心機能だけでなく経時的な心電図変化にも注意が必要である。