[P76-3] 小児血栓弁に対する組織プラスミノーゲン活性化因子の使用経験
キーワード:人工弁置換術後, 血栓弁, 血栓溶解療法
【背景】血栓弁は弁置換術後の重篤な合併症である。本邦で保険適応はないが、海外では循環が安定している場合はt-PAなどでの線溶療法が推奨されている。今回我々は血栓弁に血栓溶解療法を行い良好な結果を得た。【症例1】7か月女児、乳児特発性僧帽弁腱索断裂に対し僧帽弁置換術(SJM Regent 17 mm)を施行。術後21日目に1葉の不動化を認めた。術直後の心エコーにて2葉は可動しており、経過より血栓弁と診断した。循環動態は安定していたため、血栓溶解療法を選択しt-PA 0.6 mg/kg/doseを3回投与後に2葉の可動性回復を確認した。合併症は生じず、現時点まで血栓弁の再発は認めていない。【症例2】 2歳8か月男児、左側相同、房室中隔欠損、下大静脈欠損に対してhepatic inclusion、共通房室弁形成後の循環不全のためtake down、その後ECMO管理となった。重度房室弁逆流のため、上記術後37日目に人工弁置換術(SJM Regent 19 mm)、left mBTS、IPASを行い、ECMOを離脱した。弁置換後56日目に両葉の開放角減少を認めた。再手術のリスクが高いと判断し、t-PA 0.6 mg/kg/doseを2回投与したところ、その後に開放角の改善を認めた。ECMO後の精査として施行した頭部MRIでは硬膜下血腫や多発微小脳出血を認めたがt-PAとの関連は不明であり、t-PA投与前後での神経症状は変化がなかった。【考察】血栓弁は緊急手術の死亡率が5-36%とされている。一方でt-PAは有効率が68.8-85.5%、死亡率が0-16.7%、全有害事象発生率は24.4-37.5%とされており、循環動態が安定している症例やリスクの高い症例に対して血栓溶解療法は有効と考えられる。また、近年では少量のt-PAを、必要に応じて反復投与することで、有効性が高く・副作用の頻度も少ないとされている。今回我々もこれに準じてt-PAの投与を行い、明らかな有害事象なく血栓弁の改善を得ることができた。血栓溶解療法に際してはt-PAの投与方法も十分検討する必要がある。