The 56th Annual Meeting of Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

Presentation information

デジタルオーラル

その他

デジタルオーラル(II)76(P76)
その他1

指定討論者:金 成海(静岡県立こども病院 循環器科)

[P76-4] 感染性心内膜炎を疑うエピソードの後に破裂したValsalva洞動脈瘤の1例

津田 恵太郎1,2,3, 鍵山 慶之2,3, 家村 素史2,3, 須田 憲治3 (1.大分こども病院小児科, 2.聖マリア病院 小児循環器内科, 3.久留米大学 小児科)

Keywords:感染性心内膜炎, Valsalva洞動脈瘤, 感染性動脈瘤破裂

感染性動脈瘤は稀な疾患であるが、上行大動脈の感染性動脈瘤は更に稀である。症例は29歳男性、small VSD (doubly committed type) 、Down症候群。入院2か月前に当院でう歯を抜歯(抗菌薬予防投与あり)し、その後近医歯科で歯石除去などの歯科処置を抗菌薬無投与で約2週間おきに行われていた。随伴症状のない発熱のため近医を受診し発熱3日目より抗菌薬内服開始となった。以後も解熱なく入院2日前に近医再診し外来でセフトリアキソン投与開始されたが解熱せず、炎症反応高値であったため発熱から16日目に当院紹介入院。画像検査では経胸壁心エコー図検査や前医での胸部CTではsmall VSD以外の異常はなかったがWBC 11450/μL、CRP 18mg/dLと高値であり感染性心内膜炎に準じてバンコマイシン+ゲンタマイシンで抗菌薬加療を開始した。反復して採取した血液培養は陰性であり入院後は比較的速やかに解熱したが、腹部造影CTや頭部単純CTなどで深部膿瘍などの所見はなく、入院後1週間の経胸壁心エコー図検査で大動脈方向から右室へ拡張期に流入する異常血流が出現した。経食道心エコー図検査 (TEE) で右冠尖から嚢状に突出する瘤状病変を認め、感染に伴う新規病変であり感染性動脈瘤と判断。心内に疣贅や弁周囲膿瘍の所見は認めず確定診断はできないが小基準3点で感染性心内膜炎疑いと診断した。心不全症状や心拡大、NT-pro BNPの上昇はなくまずは感染性心内膜炎に準じて抗菌薬加療を完遂し入院6週間の時点でTEEを再検。嚢状瘤の径や短絡血流の径は変化なく、心臓カテーテル検査でも右冠尖から右室流出路に向かう血流を認めるがQp/Qsは1.3と軽度上昇程度に留まった。感染に伴う脆弱組織であり穿孔部位の拡大による増悪の可能性から治療適応と考えたが、心不全所見はなく家族は手術を希望せず経過観察中である。