[P76-5] 重症心奇形を合併した胃食道逆流症に対する噴門形成術の検討
キーワード:胃食道逆流症, 重症心奇形, 小児
(目的)胃食道逆流症(GER)に対する噴門形成術は腹腔鏡手術で施行することが一般的となってきたが,心奇形を合併する場合,肝腫大を伴うことが多く,肝挙上に難渋することが多い.今回,当院で経験した重症心奇形合併症例に対する噴門形成術について検討した.(対象と方法)当院では2009年から2019年までに93例の噴門形成術を施行した.PDA, ASD, VSDのみを除く心奇形を重症心奇形と定義したところ,93例中,重症心奇形を合併していた症例は10例であり,これら10例について検討した.(結果)重症心奇形を合併した噴門形成術症例10例のうち,7例に食道裂孔ヘルニアを認めた.10例の手術時年齢は中央値が1歳0カ月(4カ月から2歳7カ月)であった.術式は,93例全体では腹腔鏡手術が86例(92.5%)であったが,重症心奇形合併例では腹腔鏡手術が5例,開腹術が5例であった.手術時間は平均4時間26分(2時間42分から5時間31分,胃瘻or腸瘻造設含む)であり,胃瘻or腸瘻造設施行例は10例中7例であった.1例は噴門形成時に胃瘻を一旦閉鎖し,再造設していた.術中,肝挙上に難渋した症例は10例中7例であり,7例とも肝腫大を認めた.これら7例のうち,腹腔鏡手術は3例,開腹術は4例であった.また,10例中,4例に無脾症を認め,4例とも肝腫大により肝挙上に難渋していた.術後は概ね経過良好であり,現時点において全例ともGERの再燃は認められず術後のQOLは明らかに改善した.(まとめ)重症心奇形合併症例では無脾症などにより肝腫大を認めることが多く,また右心負荷が強い場合は,気腹操作が勧められず開腹術を選択することがある.しかし開腹術であっても横隔膜側へ肝臓を強く圧排し続け,肝挙上に難渋することが多い.いずれの術式であっても肝挙上による食道裂孔部の視野展開が非常に重要となり,手術時間にも影響すると考えられる.