[P77-1] 心房中隔欠損に対してカテーテルによる一時的閉鎖を行い肝移植を施行した両側肺動脈狭窄・心房中隔欠損の2症例
Keywords:右心負荷, 肝移植, アラジール症候群
肝移植術中の移植肝グラフト再還流時に大量の空気が下大静脈経由で右心系に流れ込むため、右左短絡を有する心疾患合併症例では空気塞栓の恐れから肝移植前に心臓の手術を優先させる。心房中隔欠損合併症例は、通常左右短絡であり、大きな欠損孔でなければ肝移植前の閉鎖術は不要であるが、右心系の圧負荷がかかりやすい病態では欠損孔の右左短絡が起こる可能性があり注意を要する。今回我々は、手術適応ではない中等度以上の両側肺動脈狭窄と心房中隔欠損を合併するアラジール症候群 2症例の肝移植を経験したので以下報告する。 症例1は9ヶ月女児。左右肺動脈狭窄中等度から重度と心房中隔欠損(小欠損)を認めた。鎮静睡眠下では左房圧は右房圧を凌駕していたが、Acute Volume Challenge Test(AVCT)直後は呼吸状態によって右房圧が左房圧より有意に高くなるタイミングを認めた。症例2は9ヶ月男児。左右肺動脈狭窄中等度と心房中隔欠損(中欠損)を認めた。鎮静睡眠下では左房圧は右房圧を凌駕していたが、AVCT直後は呼吸状態のよって左右房圧が左房圧より有意に高くなるタイミングを認めた。いずれも移植肝グラフト血流再開時に空気塞栓を起こす可能性が高く、肝移植時に心房中隔欠損孔をカテーテルで一時的に閉鎖することとした。いすれも内頸静脈からカテーテルを挿入し、症例1はピッグテールカテーテルで、症例2は先孔Bermanカテーテルで欠損孔を再還流時に閉塞した。術後の頭部エコーで特に塞栓所見なく、診察所見上も異常を認めなかった。 以上の方法は、心臓手術適応でない左右肺動脈狭窄・心房中隔欠損合併症例に対する肝移植において新しい治療方針となる。近年、肝移植適応症例が増加しているアラジール症候群において同様の心合併症例が多く、治療方針のコンセンサスが必要と考える。