[P77-4] 左下腿蜂窩織炎の治療中に発症したリウマチ熱の一小児例
キーワード:リウマチ熱, 蜂窩織炎, 皮膚軟部組織感染症
【背景】リウマチ熱(Rheumatic fever;RF)は、A群β溶血性連鎖球菌(GAS)の感染後に発症する発熱、紅斑、関節炎、心炎等多彩な症状をきたす非化膿性疾患である。抗菌薬の普及に伴い先進国でのRF発症は激減しているが、日本では年間4~10例程度のRFの発症が報告されている。RFは主にGAS咽頭炎を契機に発症するとされているが、左下腿蜂窩織炎の入院加療中にRFを発症した症例を経験した。【症例】14歳男児。受診前日からの左下腿前面の発赤・腫脹・疼痛と38.5度の発熱を主訴に受診、左下腿蜂窩織炎と診断し、セファレキシン処方のうえ自宅療養としていたが改善せず、発熱から4病日に入院した。咽頭炎の所見はみられなかった。CRP 4.5 mg/dLと上昇しており、セファゾリンにて点滴加療を開始した。5病日に蜂窩織炎部位の切開排膿を行なった後、蜂窩織炎の局所所見は改善したが発熱・炎症反応高値が持続した。血液培養と切開排膿部の創部培養は陰性であった。9病日から背部痛、左手関節痛、左足関節痛が出現し、13病日に胸痛、呼吸苦が出現した。同日の胸部レントゲンで心胸郭比60%と心拡大があり、心エコー図検査において大動脈弁逆流(中等度)、僧帽弁逆流(中等度)、三尖弁逆流(中等度)、及び左心系の拡大所見、心電図ではPR間隔延長(204 ms)を認めた。さらに同日のASO 1195 IU/mLと高値であったことからRFと診断した。RF治療としてベンジルペニシリン(PCG)、プレドニゾロン(PSL)、アスピリン(ASA)、及び心炎に対し利尿薬、ACE阻害薬の投与を開始したところ、速やかに解熱し、胸痛と呼吸苦も消失した。左心系の拡大所見の改善を確認し、39病日に退院した。退院後にPSL及びASAは漸減中止、PCG少量投与を継続中である。発症3ヶ月の時点で大動脈弁逆流が軽度残存している以外に心後遺症はない。【結語】抗菌薬投与と切開排膿を行っても改善のない皮膚軟部組織感染症においては、鑑別疾患としてRFも念頭に診療するべきである。