[P78-1] 小児心疾患におけるトルバプタン投与の有効性と安全性に関する検討
Keywords:トルバプタン, 心不全, 体液貯留
【目的】小児の心不全や体液貯留に対するトルバプタン投与の有効性と安全性について検討すること。【対象】2018年12月から2020年1月で、ループ利尿薬などの利尿薬を投与しても心不全や体液貯留のコントロールが困難であった小児30例(0~15才、平均1才4か月)。症例の内訳は、心臓手術後29例(1例を除いて術後1か月以内)、拡張型心筋症1例。性別は男児17例、女児13例、月齢は0-6か月が11例、6-12か月が5例、12-24か月が6例、24か月以上が8例であった。【方法】トルバプタン投与量は0.1mg/kg/day 分1で内服開始とし、検査項目は、投与前、投与1日、3日、7日時の尿量(1日尿量)、体重、トルバプタン以外の利尿剤投与量、血液検査(血清Na、浸透圧)、尿検査(尿中Na,浸透圧など)。投与中止基準は、血中Naが24時間で12mEq/l以上の上昇またはNa>145mEq/lとなった場合とした。【結果】トルバプタン投与前後で体重は6.83±3.6kgから投与1週間で6.79±3.6kgとわずかな減少で、尿量/体重/日は94.3±33から投与後1週間で88.6±30.1と増加していなかったが、フロセミド投与量は静注換算で40.3±26.4mg/dayから13.4±11mg/dayと有意に減量することができた。血清 Naは132.4±2.4mEq/lから134.6±3.0mEq/lと有意に上昇、尿中Na は54.9±31.7mEq/lから43.6±31.1mEq/lと低下した。血清浸透圧/尿浸透圧は0.96±0.38から1.21±0.52と上昇した。また、BNPは280.1±264.8pg/mlから173±151.5pg/mlと低下した。なお1例で副作用と思われる高Na血症のため投与を中断した。【考察】Vp2受容体阻害薬であるトルバプタンは水利尿により、心不全や体液貯留を生じる病態において成人では体重減少の面で短期・長期で有効とする報告がある。今回の小児における検討では体重減少はわずかであったが、他の利尿剤を有意に減量することができた。小児においても、高Na血症には注意が必要だが、先天性心疾患術後症例も含めて安全に使用できると考えられる。