[P79-6] ダウン症の心室中隔欠損症患者における肺動脈絞扼術の有効性についての検討
キーワード:Pulmonary Artery Banding, Ventricular Septal Defect, Down’s Syndrome
【背景】主肺動脈絞扼術(mPAB)は肺血流増加疾患に用いられる効果的な術式であり、心室中隔欠損症(VSD)症例に対してもしばしば適応される。特にダウン症のVSD症例の場合、肺高血圧症を合併しやすく当院ではmPABを行う頻度が比較的高い。【目的】ダウン症のVSD症例におけるmPABの有効性について後方視的に検討した。【方法】2007年11月から2019年3月までに心内修復術を施行したダウン症のVSD症例29例を対象とした。肺動脈絞扼術施行群(P群)と非肺動脈絞扼術施行群(N群)に分け、手術時年齢・体重・VSD径・BNP・心臓カテーテル検査所見・心臓超音波検査所見・入院期間・PICU滞在期間・挿管期間・輸血量・肺動脈形成術の有無・根治術手術時間等の項目を検討した。【結果】死亡例・重篤な合併症発症例はなかった。P群はN群に比べ、姑息術及び根治術の合計入院期間(88.0日 v.s. 31.5日, p=0.0077)・合計PICU滞在期間(21.2日 v.s. 9.9日, p=0.0050)・合計挿管期間(9.4 日v.s. 4.9日, p=0.0094)が有意に長かった。また肺動脈形成術を必要とする症例が有意に多く(91.7% v.s. 5.9%, p<0.0001)、根治術時の手術時間(381.1分 v.s. 264.5分, p=0.0058)・人工心肺時間(210.8分 v.s. 145.2分, p=0.0051)が長かった。根治術に限った入院期間(21.5日v.s. 31.5日, p=0.1863)・PICU滞在期間(11.0日v.s. 9.9日, p=0.5120)・挿管期間(3.8 日v.s. 4.9日, p=0.2770)に有意差はなく、mPABの有用性を示唆する結果は得られなかった。【結論】ダウン症のVSD症例においても、全身状態が保たれている場合はなるべく一期的根治術を検討していきたい。